少ない雨量水位データから河川の水位を予測するAI技術

sugitec

こんにちは。管理人Hashitecです。昨夜は強力な台風15号が関東に直撃し、雨もそうですが風が非常に強く、トラックが横転したり羽田空港では駐車場の仮設足場が崩落するなど、大きな影響が出ています。

夜ということもあって人が出歩いていないのが幸いしたことも多いと思いますが、逆に夜にこのレベルの台風がこられると家の中でも不安で眠れぬ夜を過ごされた方も多かったことかと思います。まだこれから状況が明らかになってくると思いますが、大きい被害がないことを祈るばかりです。

さて本日は、富士通株式会社と株式会社富士通研究所が、河川の水位などをAIで予測できる技術を開発したという話題。昨今ゲリラ豪雨も増えており、急な河川の氾濫なども起きているのでこういった技術は非常に大事です。

過去の少ない雨量や水位データからでも精度よく水位を予測

この河川の水位を予測できるAI技術の名称は「FUJITSU Human Centric Zinrai」。過去のデータから水位を予測できる技術で、通常は予測するにはデータ量は多いほど良いものという認識がありますが、この技術では少ないデータから精度の良い予測ができる技術となっています。

この技術は水理学の知見を組み込んだ数理モデルを用い、測量データが最新化されていない中小河川や、新たに水位計を設置するような雨量、水位データの蓄積が少ない区間も水位予測を可能に。

これによって水害に対する防災・減災に向けて現場への迅速な対応や、避難勧告の発令における適切な意思決定が支援されます。

背景

昨今頻発している集中豪雨により、全国の自治体が管理する河川で深刻な被害が多発しています。特に都市部を流れる中小河川において、ゲリラ豪雨や台風の影響で水位が急激に上昇。短時間での被害が拡大する危険性が年々高まっており、水害への対策が急務になっています。

大規模な水位予測は行われてきていますが、中小河川や新たに水位を設置する区間では予測に必要な観測データが揃っていない、過去の蓄積データが少ないなどが理由で水位の予測が困難だったそうです。

この度の新技術の開発では、測量データを用いず過去の少ない雨量・水位データから高精度な河川の水位予測を可能にする技術が開発されました。

開発された技術

そもそも少ないデータからどうやって水位予測を可能にしたのか?ですが、水理学の知見であるタンクモデルの考え方をベースに関数を作成。過去の雨量・水位データを機械学習させることで、最適なパラメータを導き出せる数理モデルを構築しています。


出典:富士通

この数理モデルを用い、AIが現在までの雨量と水位データと、気象関連機関から自治体へ配信される数時間先の気象データをもとに、今後の水位が予測されます。

河川改修などに伴う環境変化に対しても、環境変化後のわずかな雨量・水位データを用いて学習し直すことで、短時間で最適化。ある自治体で管理する中小河川にてこの技術を適用し、精度検証を行ったところ、平常時のわずか1降雨のデータを学習に用いた検証で、増水時の水位上昇を一定の精度で予測できることが確認されたそうです。


出典:富士通

さらに流量観測などのデータを用いた標準的な水位予測の方法と比較検証した所、本技術では同等以上の精度が得られることが確認されています。

まとめ

富士通では、本技術を日本だけでなく海外の河川への適応も見据えて、様々なユーザーと検証を勧め、19年度中のソリューション化を目指しているそうです。

この技術のベースとなっている「タンクモデル」ですが、これは国内だけでなく海外でも広く活用されている、現在最も多い流出モデルのひとつ。しかしこのモデルにも困難な点があります。それはパラメータが多いことから、一意な値に決定することは未だに困難という点。

タンクモデルはパラメータの設定が煩雑なのが問題点で、調べてみると結構このパラメータの設定手法で試行錯誤して開発されている文献が数多く見られます。

そのパラメータ部分をAIで機械学習させることで、最適なパラメータを導き出せるようにした富士通の解。異常気象で水害も増加してきた昨今、この技術が広く活用され災害に対し強く、安心できる町が増えていくことを願います。

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