こんにちは。2013年頃から大きなブームになった3Dプリンター。昨今ではあの頃ほどに騒がれなくなっていますが、それだけ定着してきているという所でしょうか。
3Dプリンタの材料の市場も年々着実に成長(年平均21.2%)を続けてきていますので、様々な用途で活用されているのは間違いないでしょう。
本日は大成建設が開発済みの3Dプリンタ「T-3DP®(Taisei-3D Printing)※1」にて製作の部材に、PC鋼材を挿入・緊張して接合したプレストレストコンクリート構造(PC構造)を適用した、国内で初となる橋を製作したという話題。
※1 建設用3Dプリンタ「T-3DP」
株式会社アクティオ、独立行政法人国立高等専門学校機構有明工業高等専門学校、太平洋セメント株式会社との共同開発となる3Dプリンタ。圧送しやすく固化しやすい特殊セメント系材料を使用し、型枠を使わずにセメントを積層しながら曲線や空洞を配置した構造的に合理的な形状の建設部材を、3Dデータから迅速に高精度に自動で自由自在に製作可能。
構造を最適化した「軽くて強い橋」
全てが3Dという訳でなく、PC鋼材との合せ技となる「橋」ですが、構造分析、感度解析、モデル変更を繰り返しながら不要な材料を削っていき、最終的に軽くて強い構造になる形を見つけるという「トポロジー最適化」という、手法で製作されています。
トポロジー最適手法で構造体としての最適化を図り、T-3DPを用いて型枠を使わずに複雑な形状の部材を簡単に短時間で自動製作でき、軽くて丈夫な構造であることも確認されたそうです。
背景
これまで同社では、生産性・安全性の向上、また従来型のコンクリート施工技術では実現ができなかった新たな構造体の製作を目指して、「T-3DP」の研究開発を進めてきています。
しかし、一般的に建設用の3Dプリンタはコンクリートを積層させながら部材を製作する過程で鉄筋補強ができないために、引張力が作用する構造部材には適用ができず、今まで意匠部材やベンチなどのオブジェ製作に用途が限定されていました。
出典:大成建設
そこで同社では、「T-3DP」を用いて部材を製作する際にPC鋼材挿入用の孔をあらかじめ設け、各部材を接合後にPC鋼材の挿入・緊張によって一体化させPC構造体とすることで、鉄筋がなくても歩行者荷重に耐えられる「橋」を完成させました。
建設用の3Dプリンティングの技術を、今回のようなPC構造体の製作に適用し、強度確認をした事例は国内でも初の事例とのこと。
技術概要
1.トポロジー最適化手法に基づく「軽くて強い橋」の構築
出典:大成建設
全体の剛性を保ちながら軽量化を図る「トポロジー最適化手法」を導入し「軽くて強い橋」となる形状を決定。最適化後の重量は最適化前の1/4程度に。また、今回製作された橋の大きさは「幅1.2m」「高さ1.0m」「長さ6.0m」。構成される部材の合計数は44個になるそうです。
2.複雑な形状の部材を簡単に短時間で自動製作
出典:大成建設
複雑な形状の部材を製作するには、従来の型枠を使った施工法では、部材ごとの型枠製作等に手間がかかるので、実現が困難だったそうです。しかし「T-3DP」ではこれらの部材を簡単に、しかも短時間で高精度に自動製作することが可能。
3.曲げ載荷試験により構造体としての強度を確認
今回製作された「橋」の中央上面に1tの荷重を加えた曲げ試験を実施。構造体として十分な強度があることが確認されました。この構造体は弾性的な挙動を示し、ひび割れの発生や荷重を取り除いた後の変形も見られなかったそうです。
まとめ
同社ではこの「T-3DP」を用いて製作した構造体の力学特性や施工法のノウハウを蓄積し、柱や梁などの構造躯体への適用を目指して、さらなる研究開発を進めていくとのこと。
3Dプリンタも確実に進化してきていますね。それ単体での適用はまだまだ先になってきそうですが、今回のように一部に組み合わせることで十分な強度を持たせることが可能ということが証明されました。
何から何まで3Dプリンタで、ということにはならないと思いますが、取り入れることで効率化に繋がる部分はまだまだ多くありそうです。