大林組、バックホウの自律運転システムを実証

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記事のポイント

・株式会社大林組(以下、大林組)と日本電気株式会社(以下、NEC)、大裕株式会社(以下、大裕)は、バックホウの自律運転システムを共同開発し、トンネル工事現場で土砂の積み込み搬出に適用する実証実験を行った。

・このバックホウの自律運転システムは、2019年7月に公開されたもので、熟練技術者による操縦のノウハウとAI技術を活用することで、堀削や積み込み時の機械の動き方を高精度に再現することができるという。

複数台重機の同時稼働・監視による省人化と、人手と同等の作業性を実現

大林組とNEC、大裕が2019年に共同開発したバックホウの自律運転システムを機能拡張し、トンネル工事現場にて土砂の積み込み搬出に適用する実証実験を行ったと発表した。


出典:大林組

建設業における生産性向上や働き方改革の実現にあたっては、ICTを活用した施工や、生産プロセスそのものを変革していくことが重要だ。建設重機の自動化や遠隔からの操縦、自律化には大きな期待が寄せられている。特にバックホウは、地盤の造成やトンネル掘削といった土木工事、大規模建築物の地下掘削における土砂の積み込みなど、施工におけるあらゆる作業に用いられるため、自律化による効果が非常に高い建設重機となっている。

3社では2019年にセンシング技術とそれらを統合管理する「ネットワークドコントロールシステム(※1)」や、NECの「適応予測制御技術(※2)」、大林組と大裕が共同で開発した、メーカや機種を問わず対応が可能な汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を活用したバックホウ自律運転システムを開発した。

今回の実証では、建設現場に適用するための機能を拡張のうえ、大林組が施工するトンネル現場において、複数台の異なるメーカのバックホウが、土砂ピット内に堆積した土砂を掘削しダンプトラックに積み込む一連の作業を、自律運転にて実施した。また、自律運転中は遠隔地から1人のオペレータが監視し、いつでも遠隔操縦に切り替えられる体制を整備することで、バックホウに搭乗するオペレータの省人化を実現したという。

※1 ネットワークドコントロールシステム
制御システムの一形態。通信ネットワークで制御に必要なセンサデータを収集し、通信ネットワーク経由で対象を制御するシステム

※2 適応予測制御技術
制御対象の動特性の変化に適応する「適応制御」と、制御対象の動きを予測することで応答遅延に対応する「予測制御」を融合したNEC独自の制御技術

実証の成果と追加機能は以下

1.一人のオペレータが複数台のバックホウを遠隔地から監視することで省人化を実現

自律運転はダンプトラックの運転手が現場に備えつけたボタンを押すことで開始。一定量の積み込みが完了すると自動で停止するためにその間は人手による作業が発生しない。自律運転中はオペレータは、遠隔地に設置したモニターで施工ヤード各所に配置した複数台のカメラからの俯瞰映像や、バックホウの姿勢や状態、掘削エリアとダンプトラックへ積み込んだ土砂形状などのセンシング情報をリアルタイムに監視できる。

加えて遠隔操縦に切り替えることで、オペレータは現場のカメラ映像や作業音などをもとにバックホウを操作できる。このように一人のオペレータが複数台のバックホウを同時に監視することで、省人化を実現している。


出典:大林組

2.効率の良い堀削・積み込み作業により、人手と同等の作業を実現

効率的な掘削作業を実施するためには、バックホウが掘削しやすい位置に土砂をかき寄せ、安定した土砂量を正確に掘削できることが重要である。また、ダンプトラックで搬出・運搬する際には、過積載の抑制や運搬中に崩れ落ちないよう適切な荷姿を形成する必要がある。

実証実験では、従来、人手で行っていた作業を自律運転で実施するため、センサを活用してピット内の土砂形状をもとに土砂を最適な位置にかき寄せる機能や、掘削したバケット内の土砂体積を推定する機能を開発し制御に組み込むことで、搬出時の総重量を目標値の98~100%の精度で積載することができたという。

加えて、バックホウの動作を高精度に制御することで、正確な掘削作業と公道運搬に適した荷姿に整形するなど、一連の作業を通じて単に同じ動作を反復するのではなく、人手と同等の作業を実現。また、ベッセル(荷台)の形状を深度カメラで認識し積み込みを制御することで、あらゆる形状のダンプトラックに適応できるという。

このシステムは、実際の建設現場に導入可能な実用性と機能性が評価され、国際学会2021 IEEE 17th International Conference on Automation Science and Engineering(CASE)に採択されたという。今後、施工現場での実適用はもとより、台数を増加させることによるさらなる生産性向上や屋外環境への対応、他建設重機との連携など技術拡張に取り組んでいくとのことだ。


□株式会社大林組
バックホウ自律運転システムをトンネル工事現場にて実証
リリース記事:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20210913_1.html

□この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
お問い合わせフォーム:https://www.obayashi.co.jp/inquiry/disclaimer/press.html

NEC お客様窓口:ネットワークサービス企画本部
E-Mail:contact@nwsbu.jp.nec.com

NEC 報道関係:コーポレートコミュニケーション本部 広報室
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