ゼンリンデータコム✕三井E&Sマシナリー
大分県大分港にて自動飛行・撮影ドローンによる遠隔間接目視点検技術を確立。

sugitec

概要

株式会社三井E&Sマシナリー(以下「三井E&Sマシナリー」)と、株式会社ゼンリンデータコム(以下「ゼンリンデータコム」)は、大分県の協力のもと、岡山県の三井E&Sマシナリー玉野機械工場にいる点検作業者が、ドローンを遠隔操作し、約250km離れた大分港大在コンテナターミナル内の港湾クレーンを点検する実証実験を実施し、構造物の遠隔間接目視点検技術を確立しましたというリリースニュースをお届けします。

自動飛行・撮影ドローンによる遠隔間接目視点検技術

この遠隔間接目視点検技術の確立により、ベテラン技術者は現地に出向くことなく港湾クレーンの点検が可能となり、点検作業の更なる効率化・省人化が期待できます。ドローンの飛行と点検箇所の撮影は自動で全て行うため、操縦スキルに依存しない安定した撮影が可能です。

今回、三井E&Sマシナリーは飛行申請、飛行ルートの設定及び、機体のオペレーション、遠隔地からのドローン操作・点検作業、ゼンリンデータコムは遠隔飛行ルート設定プログラムの作成、遠隔地のドローン操作技術の調査及び関係各社との調整、各種申請関連の支援、大分県は実証実験の実施場所の提供を実施しました。

【実証実験の概要】
実施期間:2022年3月14日(月)から3月17日(木)の4日間

実施場所:大分県大分港大在コンテナターミナル内 (管理者:大分県大分土木事務所)の港湾クレーン

実施目的:
4G(LTE)回線を利用したドローンの遠隔操縦技術とドローン自動飛行によるクレーン点検技術を組み合わせ、遠隔地から目視外飛行にて、ドローン自動飛行によるリアルタイムでの映像確認及び画像撮影を実現する「遠隔ドローン自動飛行点検」の技術検証、実用化に向けての課題解決に向けた検証。

本実証実験では、三井E&Sマシナリーが所有するDJI JAPAN 株式会社(以下「DJI JAPAN」)の最新型産業用ドローンである「Matrice 300 RTK」を使用し、カメラは同社の「Zenmuse H20」を使用しました。ドローンの飛行制御には、RTK測位を活用したソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」を利用しました。

ichimill(イチミル)
https://www.softbank.jp/biz/services/analytics/ichimill/
ichimillは、準天頂衛星「みちびき」などのGNSS※1から受信した信号を利用してRTK測位※2を行うことで、誤差数センチメートルの測位を可能にするサービスです。
※1 GNSS(Global Navigation Satellite System)とは、QZSS(準天頂衛星システム)やGPS、GLONASS、Galileoなどの衛星測位システムの総称
※2 RTK(Real Time Kinematic)測位とは、固定局と移動局の2つの受信機を利用し、リアルタイムに2点間で情報をやりとりすることで、高精度での測位を可能にする手法のこと

【実証実験の詳細】
実証実験は、点検作業者を約250km離れた三井E&Sマシナリー玉野機械工場(岡山県)に配置、ドローンの離着陸地点をメンテナンスハウス周辺に設置し、本実証において点検対象とした港湾クレーンまでの飛行経路と点検箇所(CG画面上で設定)の撮影を設定した自動飛行ルートを事前に作成し、現地では玉野機械工場にいる点検作業者からの飛行開始の指令を受信したドローンが、自動飛行ルートに従って飛行し、4G(LTE)回線を通じて撮影及び点検箇所の映像のリアルタイム配信を実施しました。

リアルタイムで点検箇所の状態を確認する中で、腐食などが激しく、詳細に確認したい個所があった場合は、自動飛行から手動飛行に切り替え、カメラを調整することで、その箇所の状態を詳細に確認可能であることも検証しました。

実証実験イメージ図

【実証実験で得られた成果】
今回の実証実験を通じて、ドローンによる遠隔間接目視点検として、課題となる以下の項目に対して、運用可能なレベルにあることを確認しました。

【課題1:映像伝送遅延】

【検証結果】
遠隔操作・確認用端末の操作入力から結果反映まで、最速で0.46秒で実現可能で、遠隔間接目視点検において、十分利用可能である

【課題2:4G(LTE)回線の接続断による対応】

【検証結果】
4G(LTE)回線接続断になった場合、ドローンはその場でホバリング体勢を維持し、回線接続が復旧したのち、残りの点検箇所の撮影を安全に問題なく実施できることを確認し、万が一の状況においても、安全に素早く点検を実施可能

上記の内容の通り、玉野機械工場から約250km離れた大分港大在コンテナターミナル内の港湾クレーンの構造物を、低遅延かつ安全に、遠隔間接目視点検が実現可能であることを確認できました。

県では、IoTやロボット、ドローン、アバターなどの先端技術を活用することで、地域課題の解決や新しい産業分野として県内産業の振興を目指す「先端技術への挑戦」を推進しています。IoTやドローンを活用した保全・保安の取組について、大分コンビナート企業協議会や大分県ドローン協議会などとも連携し、地域における社会実装を促進しており、引き続き、本取り組みの推進を支援していく予定です。

ドローンにて自動撮影した画像は、三井E&Sマシナリーの港湾クレーンの次世代遠隔モニタリングシステム「CARMS」の機能の1つである、「クレーン構造物点検管理」で点検結果とともにクラウドに蓄積することで、効率的な運用管理が可能になります。同機能は、グループ会社の三井E&Sシステム技研との共同開発によるものです。また現在、ゼンリンデータコムは、撮影した画像を解析することにより、自動で発錆の有無や錆の定量評価(点検箇所に占める発錆量を数値化)が可能になる技術も開発を進めております。

資料引用:ゼンリンデータコム

おわりに

超遠隔ドローン調査を可能にする通信帯の整備は、地方に目を向けるとまだまだ緩やかな進展なのかもしれません。日本では、2020年の春に5Gのサービスが開始。5Gを提供するキャリアは、4キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル)。各社とも5Gのプレリリースとして、さまざまなイベントで5Gネットワークの体験会が実施されました。

基盤展開率という指標がありますが、日本国内を10km四方で区切った際に、5G基地局がある範囲の割合を示す指標です。5G基地局がなければ5G通信は行なえないため、基盤展開率が高いほど、日本国内のどこにいても5G通信ができることを表しています。
2024年度末までの基盤展開率は、NTTドコモが97%と最も高く、ついでKDDIの93.2%。NTTドコモは2020年6月末には47都道府県にエリアを拡大しました。KDDIは2021年度に1万局を全国展開予定です。こうしてみると、NTTドコモとKDDIが、日本の5G普及をリードする存在になるかもしれません。

5GによってIoTが普及し、さまざまなセンサーがインターネットにつながることで、より効率的な情報の送受信ができるようになります。5Gは遅延なく情報を受け取って処理できるため、車の自動運転やこうした超遠隔での自動ドローン調査も日常化する日が近いでしょうし、また、著しい発達を遂げているAIの分野でも、5Gは大きな影響をもたらします。IoTによって大量の情報が飛び交うようになりますが、これらを5Gによって遅延なく受信し、AIが適切に判断することで、様々なモビリティや産業ドローンの自動運転の安全性が増すと予想されます。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□株式会社ゼンリンデータコム
リリースニュース
https://www.zenrin-datacom.net/newsrelease/20221011_01.html

□株式会社三井E&Sマシナリー
https://www.mes.co.jp/machinery/

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