株式会社奥村組(以下、奥村組)と昭和コンクリート工業株式会社(以下、昭和コンクリート工業)は、既開発のプレキャスト(※1)PC床版(※2)の継手工法「Zスパイラル工法」を用いて取り替え、縦目地で接合したPC床版が、輪荷重走行試験(※3)により100年に相当する耐久性を有することを確認し、床版の幅員方向分割取替(半断面施工)工事において同工法を適用実施というリリースニュースをおとどけします。
※1:工場であらかじめ作られたコンクリート部材のこと。
※2:あらかじめ圧縮応力(プレストレス)を加えたコンクリートで製作した自動車や人などの荷重を直接受ける部材のこと。
※3:大型車による繰り返し走行を模擬した試験で、床版のひずみや変形を計測することによる道路橋床版破壊メカニズムの解明や、新しいタイプの床版、各種補修補強工法の効果(疲労耐久性)評価を目的とする。
継手工法「Zスパイラル工法」

図1 Zスパイラル工法とループ継手工法の概要
Zスパイラル工法の概要(図1)
標準工法であるループ継手工法は、ループ筋内に6本の橋軸直角方向鉄筋を挿入する必要があり、この作業に多くの時間と労力を要します。
本工法は、橋軸直角方向鉄筋の代わりに、矩形状の特殊らせん鉄筋「Zスパイラル筋」をループ筋の上部から挿入し結束固定するもので、接合部に要する作業時間を約75%短縮することが可能となります(※4)。2024年6月に、NEXCO総研に継手性能の証明書を提出し、承認されました。
※4:2024年12月12日付ニュースリリース https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2024/pcz75.html
背景
老朽化した既存のコンクリート床版をプレキャストPC床版に更新する工事において、工事中の走行車線を確保するために、幅員方向の半断面ごとに分割して施工する場合があります(半断面施工)。
この場合、半断面の床版を先行して取り替え(1次施工)、走行車線の切り替え後に残りの半断面の床版を取り替えます(2次施工)。その後、縦目地において1次施工床版と2次施工床版を一体化するため、PC鋼材を用いてプレストレスを導入することで結合します(図2)

図2 幅員方向分割取替工事(半断面施工)のイメージ
しかし、これまでは横目地における床版の接合を標準工法で行うことが一般的であったため、これをZスパイラル工法で行う場合(図3)に縦目地で接合した床版が十分な疲労耐久性を有するのかを確認する必要がありました。

図3 横目地の接合にZスパイラル工法を用いた場合の縦目地での接合のイメージ
輪荷重走行試験の概要
横目地においてZスパイラル工法で接合した床版を、縦目地で一体化させた実規模の床版供試体を作成して輪荷重走行試験を実施し、100年に相当する耐久性を有することを確認しました(写真1、2)。
これにより、縦目地での接合が必要となる幅員方向分割取替工事でZスパイラル工法が適用できます。

写真1 輪荷重走行試験状況

写真2 漏水試験状況
今後の展開
今後、高速道路の床版分割取替工事に本工法を積極的に提案し、普及・展開を図っていきます。
おわりに
施工時間が従来のループ継手工法が平均約40分間であるのに対して、Zスパイラル工法は平均約10分間で、作業時間を約75%短縮できるのならば、日中から夜間と施工継続が可能でしょう。
日本の流通経済の動脈である高速道路の持続的なメンテナンスはこうして技術進歩により保たれているのである。
【お問い合わせ先】
□株式会社奥村組
技術本部 技術研究所 企画管理グループ
リリースニュース:https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2025/pcz-1.html
TEL:029-865-1521
FAX:029-865-1522
E-mail:giken@okumuragumi.jp
□昭和コンクリート工業株式会社
営業本部 事業企画課
TEL:058-255-3337
FAX:058-252-3177
E-mail:head@showa-con.co.jp
【開発担当】
株式会社奥村組
土木本部 土木設計部 藤井
昭和コンクリート工業株式会社
営業本部 開発部 国井