鹿島建設株式会社(以下、鹿島)は、CO2を吸収・固定するコンクリート「CO2-SUICOM®」(シーオーツースイコム)を用いて製造した大型ブロック擁壁を開発・実用化し、新名神高速道路建設工事において初めて適用というリリースニュースをお送りします。
CO2-SUICOM®大型ブロック擁壁
これまでCO2-SUICOMは、小型のプレキャストコンクリート製品(PCa製品)を中心に展開してきましたが、このたび材料や配合、製造方法を見直したことにより、大型のPCa製品の製造が可能となりました。本工事では、大型ブロック擁壁180個の設置を予定しており、全ての設置が完了すると従来製品を使用した場合と比較して、1.4tのCO2を吸収・固定でき、セメント量を低減する効果と併せると約13tのCO2削減を実現します。
今回、大型ブロック擁壁が実用化され、大型PCa製品への展開の準備が整ったことにより、CO2-SUICOMの適用範囲が拡大し、より多くの建設工事での使用を提案することが可能となりました。
今後もCO2-SUICOMの市場拡大および普及を積極的に進め、持続可能で安全・安心なインフラを構築するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

施工が完了している法面

CO2-SUICOM製の大型ブロック擁壁
適用したCO2-SUICOMの概要
CO2-SUICOMは、セメントの一部を産業副産物に置き換えることでCO2を削減するとともに、炭酸化養生※することによりコンクリートに配合した材料γ-C2SがCO2を吸収・固定化する技術です。
これまでCO2-SUICOMは、小型PCa製品が中心で、部材全体にCO2を吸収させることでカーボンネガティブを達成していました。
一方、大型PCa製品では、CO2削減量とコストのバランスが取れた新たな配合グレード「CO2-SUICOM(E)」を設定し、CO2を吸収させる範囲をコントロールして、部材全体ではなく表層部分に限定することで、断面の大きな部材においても、比較的短時間でCO2を吸収・固定することが可能となりました。
※ CO2を封入した槽内でコンクリートを養生し、安定した環境でCO2を吸収・固定させる方法

炭酸化深さを測定
大型ブロック擁壁の適用によるCO2削減量
今回開発した大型ブロック擁壁は、従来製品に比べて1個当たり、セメント材料の置換により約64kgのCO2を削減し、炭酸化により約8kg のCO2を吸収・固定、合計約72kgのCO2を削減しています。
高速道路工事の一部である総延長約420mの法面に本製品180個の設置が完了すると、CO2削減量は約13t、CO2固定量は1.4tとなり、大型PCa製品を大量に使用することで、大幅なCO2削減が実現できます。

大型ブロック擁壁の施工状況

高速道路工事の法面の一部に適用
今後の展開
鹿島は今後、CO2-SUICOMの製品ラインアップや製造拠点を拡充するとともに、様々な工事への適用を進めて、迅速に社会実装することで、カーボンニュートラル社会の実現に一層貢献してまいります。
環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM®(シーオーツースイコム)」
https://www.kajima.co.jp/tech/c_eco/co2/index.html#!body_02
資料引用:鹿島建設
おわりに
いよいよ10月13日に閉幕を迎える大阪・関西万博。
「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、世界中の人やモノを呼び寄せた「未来社会の実験場」は、次世代の暮らしを変える大きなヒントを与えてくれました。
ここでも鹿島が実現させた「CUCO-SUICOM(クーコスイコム)ドーム」の挑戦は、私たちが目指すべきカーボンニュートラル社会の姿を明確に示しています。

※ 一見すると懐かしき「ポイポイカプセルハウス」
未来の建設を担う驚異の「CO2-SUICOM」技術
このドームは、セメントの一部を特殊な材料に置き換え、製造過程で二酸化炭素(CO2)を吸収・固定する環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」を活用して構築されました。
その結果、CO2排出量を従来比で全体70%も削減。
特に内壁の仕上げ材である「クーコスイコムショット」は、107%削減という驚異的なカーボンネガティブを実現し、「サステナドーム」として子どもたちに地球環境問題を学ぶ機会を提供しました。
輸送の壁を乗り越えた「KTドーム工法」
これまで、CO2-SUICOMは運搬コストが高い「プレキャスト」工法に限られていました。
しかし、鹿島は現場で製造を可能にする「KTドーム工法」を開発し、この壁を打ち破りました。
膨らませた塩化ビニール膜を型枠に使い、コンクリートを吹き付ける新工法によって、工期の安定・短縮と、密閉空間での効率的な炭酸化によるCO2固定化(約4週間)に成功。新技術の実用化に大きな弾みがつきました。
残された課題と未来への展望
実用化に成功した一方で、コスト高の克服や、炭酸化期間の短縮など、建設材料としての競争力を高めるための努力は続きます。
鹿島は、CO2貯留技術(CCS)の費用をスイコム製造に充てることで、コスト削減を図る仕組みを提案するなど、普及を加速させるためのアイデアを打ち出しています。政府の予測では、2030年時点でCO2吸収型コンクリート市場は約15兆~40兆円に拡大する見込みです。
地球温暖化が深刻化する中、万博という大舞台で示されたこの技術は、カーボンニュートラル社会への扉を開ける鍵となるかもしれません。
万博は閉幕しますが、「鹿島レガシー」として、ここから世界中へと広がっていく「CUCO-SUICOM」の未来に、引き続き注目していきましょう。
▼鹿島のCUCO-SUICOMドーム
【お問い合わせ先】
□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202510/9c1-j.htm