東京大学発AIスタートアップの燈株式会社(以下「燈」)は、オリエンタル白石株式会社(以下「オリエンタル白石」)と共同で、橋梁工事等で用いられる吊り足場上における四足歩行ロボットの自律歩行実証実験を実施というリリースニュースをおとどけします。
吊り足場上での四足歩行ロボットの自律歩行実証

養生シートやケーブル類への引っ掛かりに自ら対処する歩行制御AIを構築し、仮設作業環境での自律歩行を確認。吊り足場における無人巡回・点検の実用化へ
本実証において燈は、実世界で高度な判断・制御を担うフィジカルAI技術の一環として、現場の路面状況に応じた歩行制御AI(歩容ポリシー)を燈で構築しました。
特に、現場でのロボットの転倒要因となる養生シートやケーブル類への脚の引っ掛かりを自ら解いて歩行を継続する動作を学習により獲得させ、シミュレーションおよび実機でその動作を確認しています。
あわせて、チェーンや路面の段差・起伏など制約の多い吊り足場上で、ロボットが安定して自律歩行できることを実際の現場で確認しました。燈は今後も、多様なハードウェアや現場課題に応用可能なフィジカルAI技術の開発を推進していきます。
実施の背景
橋梁や高速道路などのインフラ建設・補修工事では、吊り足場と呼ばれる仮設作業床が多く使われています。
吊り足場上は、低い天井や構造物を支えるチェーン・ワイヤー、昇降用開口部が存在する特殊な環境です。加えて、作業用の養生シートや照明ケーブルが足元に存在するなど、ロボットの走行においては制約の多い空間となります。
さらに、近年の気候変動に伴う夏季の気温上昇等を受け、建設現場における作業員の安全巡回やリスク管理の重要性は益々高まっています。
しかし、高所や狭く身動きの取りづらい吊り足場内での巡回業務は、人手不足が深刻化する中で現場の大きな負担となっていました。制約の多い空間での巡回・点検業務を四足歩行ロボットで代替・自動化できれば、作業員を作業から解放して定期的な現場監視の省人化・効率化につながります。
こうした背景から、オリエンタル白石と燈は共同で技術開発を進めてきました。物理世界で柔軟かつ高度に判断・動作するフィジカルAI技術を活用し、吊り足場上を確実に自律歩行・巡回する体制の構築を目指しています。
本実証実験における燈の技術提供と検証成果

本プロジェクトにおいて、燈は強化学習をはじめとするフィジカルAI技術を活用し、以下の技術開発・検証を推進しました。
- 養生シートやケーブル類への引っ掛かりに対処する歩行制御AIの構築
養生シートのめくれや足元のケーブル類への脚の引っ掛かりは、前進不能や転倒に繋がる大きな要因であり、既存の歩行制御では対処が想定されていない課題でした。これに対し、燈は脚の引っ掛かりを検知する仕組みを構築し、さらに引っ掛かった脚を自ら持ち上げて自律的に解除する歩行制御AIを開発しました。シミュレーションおよび実機環境において、引っ掛かりにくい歩行と、引っ掛かりを自律的に解除する動作を確認しています。
なお本AIは、吊り足場上の段差や起伏を含む路面においても、安定した自律歩行が可能であることを複数回の現場検証により確認しました。
- 制約の多い空間における自律歩行の検証
吊り足場上には構造物を支えるチェーンが一定間隔で張られており、ロボットが通過できる幅は限られます。こうした狭い区間を含む吊り足場上の通路について、ロボットが自律的に移動できることを現場で確認しました。
今後の展望
オリエンタル白石と燈は、今回の実証成果を踏まえ、吊り足場上での自律巡回の実現に向けて、引き続き共同で技術開発を進めていきます。学習環境の拡張などを通じて、より多様な現場状況に柔軟に対応できる歩行制御AIへと進化させていく予定です。
また、こうした制約の多い現場の課題に対しては、四足歩行ロボットに限らず、ヒューマノイドロボットやAGV、ドローンなど、課題に適合したロボットの選定とその制御AIの開発を行っていく方針です。建設現場での自動巡回や安全管理にとどまらず、製造工場や物流拠点などの多様な現場における自動化・省人化に向けて、本実証で培った技術の広範な展開を目指しています。
資料引用:燈
おわりに
こうした燈(あかり)株式会社とオリエンタル白石による実証実験は、単なる「ロボット活用の成功例」にとどまらず、建設DXが次のフェーズへ突入したことを象徴する出来事と言えます。
これまで「書類作成」や「設計最適化」といった画面内の作業が中心だったAI活用は、現場の泥臭い物理空間を制御する「フィジカルAI」へと確実に足場を広げています。
同社と建設企業との提携の広がりを紐解くと、今後の建設Techが向かう3つの進化が見えてきます。
第一に、「リアルな現場動作への深耕」です。
車輪が使えず足元が不規則な吊り足場のように、これまで自動化が困難とされた極限環境において、AIが自律的に障害物を回避・解除する技術が確立されつつあります。
今後は単一のロボットにとどまらず、ドローンや重機など多様なハードウェアの協調制御へと発展していくでしょう。
第二に、「提携エコシステムの広がり」です。
大手ゼネコンとの共同開発で基礎を築き、専門工事会社の現場課題へと垂直展開され、さらには自治体(発注者)のインフラ管理へも波及しています。
そして第三に、「他産業への還元」です。
高所・悪天候・狭小空間といった世界で最もハードルの高い建設現場で鍛え上げられたフィジカルAIの堅牢性は、製造工場や物流倉庫など、日本のあらゆる基幹産業の省人化を強力に後押しする可能性を秘めています。
人手不足や酷暑での安全管理といった深刻な課題に対し、AIが「知識の継承」と「現場作業の代替」を同時に担う未来は確実に近づいています。泥臭い現場から社会課題を解決していく最先端AIの挑戦と、建設DXの次なる進化から今後も目が離せません。
【リリースニュース配信元】
□燈株式会社
リリースニュース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000076.000083531.html
Webサイト:https://akariinc.co.jp/
燈株式会社は、「日本を照らす燈となる」という使命を掲げ、AIをはじめとした最先端テクノロジーで社会課題を解決する、東京大学発AIスタートアップです。建設業、製造業、物流業、卸売・小売業など、日本の基幹産業における生産性向上や技術の継承といった課題の解決へ向けて、独自のAI技術を駆使したソリューションを提供しています。