世界初の燃料電池ドローンで長時間飛行を実証

sugitec

こんにちは。様々な産業で活用の進むドローンですが、多くのドローンで抱えている課題として長時間の飛行ができないという点があります。

DJIのMatrice300など最新のドローンではかなり長時間の飛行を実現しているものもありますが、消費電力は重量が重くなるほどそれに比例しますので、作業用途のペイロードによっては飛行時間は公称値よりも短くなる可能性は高いでしょう。

今回は、そんなドローンの課題を解決すべく開発された「個体酸化物形燃料電池(SOFC)ドローン」の世界初の実証が行われたという話題。

 SOFC(固体酸化形燃料電池)とは
ジルコニアやセリアなどの固体酸化物(セラミックス)を電解質に用いた燃料電池。一般的に650~800℃の高温で作動し、各種燃料電池の中で最も高い発電効率が期待されています。

LPG燃料により様々な地域での物流、インフラ点検、災害対応などに期待

この長時間飛行・作業が可能な「SOFCドローン」の実証ですが、「株式会社プロドローン」「株式会社アツミテック」「環境技術センター」「産業技術総合研究所(産総研)」によって世界で初めて行われました。

液化石油ガス(LPG)が利用できるSOFCスタックの高出力化と、出力あたりの重量を従来よりも60%低減したという軽量化により、上空でも発電可能なSOFCシステムを開発したとのこと。


出典:プロドローン

このSOFCシステムで発電した電力を、ドローンや二次電池へ供給することによって飛行・作業時間を長くするというものです。要は容量の大きい電池を使うというのではなく、発電して供給するという発想ですね。

また、ドローンの電力負荷変動が大きい場合でも電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に安定的に改質できる内部改質SOFC技術も開発したとのこと。汎用的で持ち運びが容易なLPGで駆動することから、水素インフラ整備前の地域でも、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で貢献することが期待されます。

社会的背景

近年、新産業を創出する具体的施策のひとつとして、ドローンの産業利用拡大に向けた環境整備が挙げられており、特に物流分野やインフラ点検分野、災害対応分野などでは、ドローンやロボットの活用が期待されています。

しかしドローンの電源として一般的に搭載されているリチウムポリマー二次電池は、単位重量あたりのエネルギー密度が小さいために、多くのドローンは飛行や作業時間が15~30分程度に留まっています。

ドローンの消費電力は重量に比例するために、多くの二次電池を搭載することはできず、物流での荷物やインフラ点検での測定機器などの重量物を搭載する作業では、さらに飛行・作業時間は短くなるという問題があります。

また、災害時にには充電用電源の確保が困難な場合もあり、二次電池の使用ができなくなることも想定されることから、これらの問題を解決するために、国内外では純水素で駆動する固体高分子形燃料電池(PEFC)搭載のドローン開発も進められていますが、水素インフラの整備前地域では燃料調達が難しいという課題もあるようです。

開発内容

ドローン搭載用SOFCスタック


「アツミテックが開発したドローン搭載用SOFCスタック外観」出典:プロドローン

単位体積あたりの出力密度を向上させるため、平板型セルを採用。発電した電気を集電するための部材を改良し、電極面積あたりの出力密度を従来の2倍まで飛躍的に改善したとのこと。

アツミテックが保有する金属加工技術を応用し、セパレーター形状などを工夫して軽量化を図っているそうで、2017年に発表された「コンパクトハイパワー燃料電池システム」と比較して出力あたりの重量を60%低減しているそうです。

このSOFCスタックをドローンに搭載することで数kgオーダーの軽量化と、それに伴う省電力化の効果が得られ、長時間飛行・作業の実現に寄与しているとのこと。

LPG駆動SOFCシステム


「LPG駆動SOFCシステムの外観」出典:プロドローン

このシステムには産総研が開発の内部改質SOFC技術が用いられており、電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に改質することで、市販のLPGカセット

ボンベを燃料として使うこともできるそうなので、水素インフラの整っていない地域でも使用が可能になるとのこと。

SOFCドローン

プロドローンはLPG駆動SOFCシステムが搭載でき、30kgまでのペイロードに対応したドローンを開発。SOFCシステム搭載による重量増加に対応すべく、重量あたりの消費電力量をできるだけ低減させる工夫が施されているそうです。


出典:プロドローン

上図は従来ドローンとの電力供給の模式図。従来ドローンはLiPo二次電池からの給電のみであるのに対し、SOFCドローンではドローン電力負荷が大きいときにはSOFCとLiPo二次電池からドローンへ、逆に電力負荷が小さい時にはSOFCからLiPo二次電池へ充電のために電力供給がされるとのこと。

まとめ

このSOFCシステムを搭載したドローンですが、電源システムの出力制御の最適などにより、1時間を超える長時間飛行・作業が実現できるという見通しを得たそうです。この技術が世界で初めて立証されたことによって、今後は様々な移動体やロボットなどへの展開が期待されています。

さらに、ドローンの長時間飛行・作業を実現するためにSOFCシステムの高出力化・軽量化、ハイブリッド電源システムの最適化、ドローンの省電力化などの改良を進めていき、SOFCドローンの早期商品化を目指すとのこと。

この技術を使ったドローンが商品化されれば、現状のドローンでは難しかったりできなかった作業の解決に繋がるかもしれませんね。

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