大林組がBIMモデルの活用プロセスを確立。BIM主体の運用へ

sugitec

こんにちは。建設業界等で働く人には随分と浸透してきている「BIM」ですが、言葉の浸透はあれどソフトウェアを実際に活用できている所はまだまだ多くはない印象で、定着しているとは言い難い状況です。

過去に日建連が行った調査によれば、BIMを導入済みの企業は調査した企業全体の約7割強だったことから、普及自体は進んでいますが、導入コストが大きいことやそれを活用する人材を育成する必要もあること、また、取引先等との共有の際に相手側にBIMがなければ共有は紙図面になってしまう、というような場合もあり、それらが普及の阻害要因のひとつになっているというパターンもあります。

その紙図面での共有に関しても、BIMモデルは2次元図面としての利用には向いていない所があり、何か変更をする度にBIMモデルと2次元図面に手を加える必要が出てきます。

今回「株式会社大林組」がそんな課題を解決し、BIMモデルを主体に運用できる手法を確立したとのことで、そちらをご紹介。

BIMモデルの施工用図面としての活用プロセスを確立し、現場での利用を開始

同社はBIMモデルの情報を生産設計図(施工用図面)として直接視覚化させた「次世代型生産設計図」を実用化したとの発表がありました。

同社は「BIMモデルを業務基盤として一貫利用する」という会社方針があり、建築物の計画から設計、施工、維持管理まで各段階に応じてBIMを用いた管理を行っているとのこと。

従来の建築工事では、意匠図・構造図・設備図を統合した2次元施工用図面を作成し施工しています。この場合、高さ方向で部材の位置が被っている場合など、不整合が見分けにくいという課題があったそうです。一方でBIMモデルは施工に必要な情報が収納され、3次元で表現されるので不整合の有無の確認に向いているが、それを2次元の施工用図面として利用するには煩雑な作業が必要になり適していません。

そのため、都度変更の度に施工用図面とBIMモデルの両方を更新しなければならず、担当者の負荷が高くBIMの一貫利用を阻害する大きな要因となっていたそうです。

一貫利用を可能に


出典:大林組

そのような課題から、同社ではBIMモデルに必要な情報を更新するだけで施工用図面として抽出・表示・伝達できる手法を確立。「次世代型生産設計図」として運用を開始したとのこと。

これによってBIMモデルの情報は施工用図面に直接反映され、これまで負担となっていた施工用図面の修正作業がなくなり、加えてBIMモデルには設計情報と生産情報を集約していることから、監理者や施工者、協力会社など利用者ごとに必要な生産情報を直接視覚化(図面化)しての伝達が可能に。

この「次世代型生産設計図」を利用することで「BIMモデルを主体とした」一貫性のある実務運用が可能となっています。この次世代型生産設計図は、デジタルトランスフォーメーションの一環として、2020年度に着工した工事に既に用いられているそうです。

次世代型生産設計図の特長

1.BIMモデル情報を直接表示

建築構成部材や個々に必要とされる生産情報は、あらかじめBIMモデルに盛り込み。そのうえで施工用図面として部材の外形情報や部材間の位置関係に関する情報など、BIMモデルから直接引用し表示。またBIMソフトのタグ表示機能により仕様に関する情報も選択し表示可能。


出典:大林組

2.必要情報を整理し、利用する人に適した様式に構成し提供

設計情報と付加すべき生産情報を標準化し、加えて施工段階や工種ごとに必要な情報を分析・分解し、目的別に分類整理。これらの分類に基づいて、監理者や施工者、協力会社など工事関係者ごとに必要とする情報をBIMモデルから選別し、利用者に適した様式で提供。

3.紙図面という「しばり」から脱却

次世代型生産設計図は、BIMモデルの生産情報をタブレットに表示できるので、1フロア全体を1枚の全体図として管理。またアイソメトリック図(立体を斜め上から見た図。等角投影図)などを用いて視覚的に分かりやすく立体で表現し、施工のイメージがしやすくなっています。

従来のA1サイズなどの紙に印刷することを前提とした、縮尺分割図の様式や表現形式に縛られないことも次世代型の特長となってます。


出典:大林組

まとめ

これまでは自社でBIMを導入していても、それを共有していくに辺りまだまだ紙図面を必要とする場面が多く、その度に担当者には更新などの作業で負荷がかかっていました。3次元モデルなので2次元に落とし込もうとすると手間がかかるのは明らかですね。

このシステムではBIMモデルの情報を、直接施工用図面に表示できることから、これまでの手間を無くすことができる他、利用する人に合わせた必要な情報だけを整理した様式として提供できることも可能とのこと。

BIMデータを起点として、それぞれ必要な形で利用できるというのは、まさに求められている方も多いことでしょう。今後一般にこのようなシステムが普及することでBIMの普及はさらに拡大するものと思われます。

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