大成建設 ✕ 東京大学生産技術研究所 高温排気ガスの拡散状況予測技術を開発。

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概要

大成建設と東京大学生産技術研究所が共同研究したオフィスビルなどに併設されている非常用発電機等から発生する高温排気ガスの拡散状況を高精度に予測できる技術を紹介。


高温排気ガスの拡散状況予測技術とは

大成建設株式会社(東京都 以下、大成建設)と東京大学生産技術研究所(東京都 以下、東京大学)はオフィスビルなどに併設されている非常用発電機等から発生する高温排気ガスの拡散状況を高精度に予測できる技術※1を開発しました。これにより、建物周辺の安全性や住環境(温度や窒素酸化物(NOx)の濃度等)に配慮した合理的な排気計画の策定が可能となります。

近年、高層オフィスビルやマンション等では事業継続計画(BCP)対応や災害対策の強化に伴い、建物で活用する非常用発電機の大型化が進んでいます。

非常用発電機から排出されるガスは高温かつNOx等の大気汚染物質を高濃度に含むことが多いため、
建物や人体への影響を抑える場所への煙突設置や排気方向の設定など排気計画が重要となっています。(図1参照)

これまでの最適な排気計画の立案では、高温排気ガスが周囲に及ぼす影響を数値解析により検討してきましたが、従来の解析技術※2は室外機・ボイラなどの中低温(50~100℃程度)の排気が対象となっており、非常用発電機等による高温の排気ガス(500~700℃程度)は、密度が大きく変化するため、拡散状況を高精度に再現できないという課題がありました。

そこで大成建設は、建物近傍に設置する非常用発電機等から発生する高温排気ガスの拡散状況を高精度に予測可能な解析技術を開発し、排気計画技術の確立に向け、実大実験や従来技術との比較により本技術の予測精度を検証し、その有効性を確認しました。

本技術の特徴は以下のとおりです。

資料引用:大成建設 高層建物に隣接して計画された発電機煙突による高温排気ガス状況と周辺への影響
資料引用:大成建設 発電機による実測を再現したシミュレーション例
(発電機から高温排気ガスが定常的に排出された場合の排気ガスと壁面近傍の平均的な温度分布)

高温状態での排気ガスの拡散状況を高精度に予測可能

本技術は、機械分野でエンジン内部の高温噴流解析等で用いられる熱流体解析技術※3を応用し、
高温状態での排気ガスの拡散状況を高精度に予測することが可能です。

また、本技術および従来技術を用いて、大型発電機の煙突から排出される高温排気ガスの温度や濃度を、発電機から約1.5~3.5m離れた地点の高さ約5~8mで実測して把握するとともに、排気ガス温度について解析を実施した結果、本技術が高温排気ガスの拡散状況を高精度に予測できることが実証されました。

合理的な排気計画の策定が可能

高温時の密度変化による影響を考慮した解析技術を用いて、非常用発電機の高温排気ガスの拡散状況を事前に予測することで、建物の屋外換気口からの室内流入防止、外壁・ガラス等の損傷防止、人体や周辺建物への影響等に配慮した安全な発電機の設置場所等、合理的な排気計画の策定が可能となりました。

今後、大成建設は、高層のオフィスビルや商業施設、ホテル、病院等で災害対策などに用いられる大規模な非常用発電機の設置に際して、本技術を建物周辺の安全性と住環境に配慮した合理的な排気計画技術の策定に活用してまいります。

※1 高温排気ガスの拡散状況を高精度に予測できる技術
本技術は、東京大学生産技術研究所 大岡龍三教授との共同研究により開発。

※2 従来の解析技術
従来技術は温度変化による密度変化を考慮することができず、高温ガスに働く浮力を温度差に比例する力で近似している。そのため、密度変化が大きい場合には誤差が大きくなる。非常用発電機のような高温排気ガスの場合、温度変化による密度変化を考慮できる本技術の適用が必要である。

※3 熱流体解析技術
機械分野においてエンジン内部の高温噴流解析等で用いられ、高温排気ガスの温度による密度変化を再現し、空気中や近接物の温度分布などを算出。

おわりに

高温排気ガスとは、主としてガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関が、運転中に大気中に排出する気体のこと。われわれのもっとも身近でもっとも多量に排出され、しかも比較的有害なところから、大気汚染の元凶とされているのは、自動車用ガソリンエンジンの排出ガスである。

一般にガソリンエンジンの排出ガスのうち、80%以上は無害の窒素と水蒸気であるが、残りの20%弱はCO2, CO, HC, NOxなどによって占められている。

このうちCO2を除く3成分が人体に対して有害である。

CO(一酸化炭素)は血液中のヘモグロビンと結合してCO‐Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)となり、その全血液中の濃度が20%になると頭痛やめまいをおこし、60%以上で意識を失い、放置すれば死に至る。

HC(炭化水素)は粘膜を刺激し、組織を破壊する。
またCOのなかでもオレフィン系、芳香族系の活性炭化水素とNOxとが太陽光線のエネルギーで反応すると、オキシダントという複雑な化合物を生成する。
これが視程障害を引き起こす、いわゆる光化学スモッグである。

NOxは窒素酸化物の総称で、一般に99%のNO(一酸化窒素)と1%のNO2(二酸化窒素)からなる。NOはヘモグロビンと結合しやすく、酸素欠乏症や中枢神経機能の減退をもたらし、量が増えれば死に至る。またNOが空気中の酸素と結合してできるNO2も、鼻、のどなどの粘膜を刺激し、空気中の濃度が高くなると死亡する。

なぜ、これらの有害成分が排出ガス中に含まれるのかといえば、HCは、本来ガソリン中のエネルギー成分であるHCが、シリンダー中で燃焼(酸化)されないまま排気管から出てしまうのである(このほかシリンダーとピストンの間を通り抜けてしまったブローバイや、燃料タンクや気化器の液面からの蒸発などでも出るが、これは一般的に排出ガスとは区別されている)。

次にCOは、シリンダー内でHCが完全に燃焼してCO2(炭酸ガス)になるべきなのに、酸素不足や燃焼効果の低さのゆえにCOにとどまったまま排出されるのである。
NOxは、ガソリン中の窒素(N2)の一部と酸素(O2)が、燃焼による高温で反応して生じる。

これらの有害成分の発生を抑えるには、混合気を理論空燃比まで薄くする反面、層状吸気や空気噴射を行ったり、点火時期を精密に調節して燃焼効率を高める、不活性ガスとして排気の一部をシリンダーに循環させて燃焼温度を下げる、などがある。

一方、どんなに手を尽くしても有害成分の発生をゼロにすることは不可能なので、排出ガスを貴金属の三元触媒コンバーターの中を通して酸化、還元させる方法も併用されている。
出典 「小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本大百科全書(ニッポニカ)について」より

6月27日。
記録上二番目の速さで関東甲信や東海、九州南部では梅雨明けが発表され、一夜明けても、日本列島は沖縄や九州から関東、北陸は強い日差しが照りつけて、最高気温は35℃前後まで上昇している。

建造物の高層化で地球温暖化の一因でもある排ガスがより増加することで、気象予測の気温より都市部では、さらに気温の高温化は今後も続くでしょう。
これを抑えるには、革新的なゼロエミッションが果たせないかぎり、激化する気象環境に今ある技術で対応していくしかありません。

上記の出典をみても、有害性を多く含む排ガスは有害成分を完全にゼロにできない現状なので、大成建設のとりくむ排出拡散予想を高精度に解析できる技術は、建物周辺の安全性と人々の住環境を守るために、長期的な気象変化や人口調査などのビッグデータのクロス利用したシミュレーション結果に活用されることを期待したいと願います。

本日も読んでいただき、ありがとうございました。
暑さにご自愛くださいませ。

参考・関連情報・お問い合わせなど

□大成建設株式会社 https://www.taisei.co.jp/

リリース記事:
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220620_8843.html

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