大林組
構造モニタリングシステム技術評価の第一号認定「建物地震被災度即時推定システム」を実装投入。

sugitec

概要

本日は株式会社大林組(以下、大林組)が、「建物地震被災度即時推定システム」について、2022年3月、一般財団法人日本建築防災協会から「応急危険度判定基準に基づく構造モニタリングシステム(※1)技術評価」を第一号事例として取得し、株式会社日立製作所研究開発グループ中央研究所内の「協創棟」(鉄骨造4階建て:東京都国分寺市)に初適用したリリースニュースをみつめます。

震災時の建物の被災程度を即時に判定

大地震発生後の被災建築物応急危険度判定(※2)は、建築士などの資格を持つ応急危険度判定士の目視調査で実施されますが、判定結果を得るまでに数日から数週間かかることが課題となっていました。

そのため、同協会では、応急危険度判定の迅速化を目的に「応急危険度判定基準に基づく構造モニタリングシステム技術評価」を2021年に開始し、構造モニタリングシステムに対する信頼性の確保と普及を推進しています。

大林組は、2013年に超高層建築物を対象とした「建物地震被災度即時推定システム」を開発しましたが、その対象を1981年6月以降の新耐震基準で設計された高さ60m以下の耐震構造の建物に拡張し、2019年に上記「協創棟」に納入しました。

その後、日立製作所研究開発グループとの協創を通じてシステムの改良を行い、同技術評価を2022年3月に第一号事例として取得しました。

建物地震被災度即時推定システム

改良された「建物地震被災度即時推定システム」の特長は以下のとおりです。

センサの容易な設置と安価なコスト

本システムに必要なセンサは、建物基部(1階)と建物最上部(最上階または最上階より1階下)の計2台です。
このため、多数のセンサとそれらを接続するLANケーブルの敷設が不要となり、新築建物だけでなく既存建物にも容易かつ安価に設置できます。
例えば、10階建ての建物では、本システムのライフサイクルコスト(設置費用に10年間の維持管理費用を合計したコスト)は、全階にセンサを設置する場合と比較して約2分の1に低減できます。

センサの設置例
建物内PCの設置例

センサが設置されていない建物階の揺れを検証

センサが設置されていない建物階の揺れは、建物基部のセンサの観測結果を設計モデルに入力して計算します。次に、建物最上部のセンサの観測結果を用いて揺れを補正し、さらに計算結果のバラツキを考慮した安全率を乗じて揺れの上限値を求めます。
「協創棟」では、これまでに観測した約110の地震を対象に、センサが設置されていない建物階の揺れは上限値を用いることで安全側に評価できることを検証しました。

構造躯体の被災程度の判定フロー

技術評価を受けた構造躯体の被災程度を地震後に数分で判定

本システムを設置した建物を日本建築防災協会に登録することにより、構造躯体の被災程度は小さいと考えられる場合は、使用可能(Aランク)を応急危険度判定士による目視調査無しで判定できます。
技術評価を受けた構造躯体の判定結果は地震発生後に数分で建物内PCに自動表示され、さらに携帯端末などに自動でメール配信されます。

このため、建物管理者などはこの判定結果に基づき、どのような行動をとるべきか速やかに判断することが可能となり、より迅速なBCM(事業継続マネジメント)を可能にします。

建物内PCに表示された判定結果の例

大林組は、「建物地震被災度即時推定システム」を震災時のBCM支援ツールとして積極的に提案することで、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。

※1 構造モニタリングシステム
地震による建物の揺れをセンサで計測することにより、構造躯体の被災程度を判定するシステム

※2 被災建築物応急危険度判定
大地震により被災した建築物について、その後の余震などによる倒壊の危険性や、外壁・窓ガラスなどの落下あるいは転倒などの危険性を判定し、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としている

資料引用:大林組

おわりに

2011年3月11日午後2時46分。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生しました。

太平洋側を中心に激しい揺れに襲われます。
宮城県栗原市で震度7。震度6強は宮城県、福島県、茨城県、栃木県の4県37市町村で観測されます。

東京23区でも最大震度5強。
超高層ビルなどを大きくゆっくりと揺らす「長周期地震動」も観測され、震源から遠く離れた東京や大阪でも被害が出ました。九州南部や小笠原諸島でも震度1を観測。国内の観測史上最大となる巨大地震は、日本全国を波打たせます。

気象庁によると、マグニチュード9.0の地震は、世界で見ても1960年のチリ地震や2004年にインドネシア・スマトラ島沖で発生した地震などに次いで、1900年以降、4番目に大きい規模の地球規模の地震でした。

今年は東日本大震災から12年…。
昭和、平成、令和と時代がうつりゆくなかで、その時代ごとに震災が起きるたびに、甚大な人命損失と地域が崩れる光景を受け止めてきました。
そして、再び警鐘が叩かれる。
政府の中央防災会議は、科学的に想定される最大クラスの南海トラフ巨大地震が発生した際の被害想定を実施している。

この被害想定によれば、南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。
また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されています。

南海トラフ巨大地震の震度分布
(強震動生成域を陸側寄りに設定した場合)

地震に耐える技術、地震を回避する技術、地震後に復興する技術と震災の教訓から開発された技術は多い…。
本日の大林組の「建物地震被災度即時推定システム」は震災後の建物を街ともに復興に寄与する技術だろう。普及の広がりを期待したい。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□株式会社大林組
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
リリースニュース:
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230302_1.html

□一般財団法人日本建築防災協会
https://www.kenchiku-bosai.or.jp/

□国土交通省 気象庁
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/assumption.html

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