大成建設
AIを用いた設備機器の最適消音設計システム「T-Optimus® Noise」を開発。

sugitec

概要

大成建設株式会社(以下、大成建設)は、室外機や冷却塔など音を発する設備機器が多数設置される生産施設などの設計に際して、騒音を基準値以下に抑制するための最適な消音装置の組み合わせを、AIの一種である「進化計算※1」を用いて自動で選定するシステム「T-Optimus Noise」を開発というリリースニュースをお届けします。

※進化計算:生物の進化の過程を模倣することで、対象となるパラメータを変形、合成、選択して、複雑な工学的問題の最適解を探索する手法。人の思考では辿り着けないような解についても効率的に求めることができる。

最適消音設計システム「T-Optimus® Noise」

本システムの適用により、設備機器の複合騒音を規制値以下に低減する消音装置の無数の組み合わせの中から、最小コストでの配置パターンを短時間で選定することができ、設備騒音の対策コストと設計時間の大幅な削減が可能となります。

工場やごみ処理施設などで室外機や冷却塔といった設備機器を多数設置する場合、設備機器から発生する複合騒音が敷地境界で法律などにより定められた基準値を超えないようにする必要があります。

このため、これまでは敷地境界における騒音の伝搬状況をシミュレーション(図1参照)により確認し、基準値の超過が予測される場合は、騒音レベルに応じて設備機器を防音塀で取り囲むか、設備機器ごとに消音装置を設置するなど設備騒音を抑える措置を講じてきました。

このうち消音装置は、専門技術者が設備機器ごとの騒音レベルに合わせて選定・設置されますが、種類によって消音性能とコストが異なるうえに、無数の組み合わせが想定されるため、大規模な工場や施設では数百個にも及ぶ設備機器ごとの検討に多大な労力と時間を要していました。

そこで大成建設は、AIの一種で、膨大なパラメータ(変数)の組み合わせの中から効率的に最適解を導き出すことのできる「進化計算」を用いて、敷地境界における複合騒音が基準値以下となり、かつ総コストが最も低くなるような消音装置の配置パターンを自動で選定する最適消音設計システム
「T-Optimus Noise」を開発し、実際の建物において効果を検証、その有効性を確認しました。

本システムの特徴および検証効果は以下のとおりです。

特徴

AIを用いて各設備機器に最適な消音装置を自動で選定
AIの一種である進化計算により、各設備機器から発生する音の特性を考慮しながら、敷地境界における騒音レベルが基準値以下となるように、各設備機器に配置する最適な消音装置を短時間に自動で選定することができます。(図2参照)

最適ケースの選定により、消音対策にかかる総コストを最小化
各設備機器に配置する消音装置の選定に加え、膨大なパラメータの組み合わせの中から、消音対策にかかる総コストが最小となる最適ケースでの設計を可能にします

検証効果

ごみ処理施設の屋上や建物周辺に設置される32台の設備機器を対象に、消音性能とコストが異なる3種類の消音装置(A型、B型、C型)を選定・配置する場合について、T-Optimus Noiseと従来法とを比較しました。(表1参照)

この結果、T-Optimus Noiseの場合はA型を5台、B型を4台、C型を2台使用し、残り21台は消音装置を設置しないという設定が選定された一方、専門技術者による従来法ではB型のみを12台使用し、その他の設備には消音装置を設置しない設定が選定されました。
従来法の検討には2日間を要したのに対し、T-Optimus Noiseでは約1時間で最適な消音装置の組み合わせを抽出できました。
また、従来法では消音装置本体の導入にかかる総コストを5千万円と試算していたのに対して、T-Optimus Noiseでは約4割減の総コスト3千万円の設備投資で騒音が基準値以下となることを確認しました。

今後、大成建設は、生産施設やごみ処理施設など設備騒音が懸念される建物の新築・改修に際し、
低コストで効果的な騒音低減対策の設計手法として、本システムを積極的に適用してまいります。

図1 屋外騒音伝搬シミュレーションの例

図2 T-Optimus Noiseによる消音装置の選定

資料引用:大成建設

おわりに

この「進化計算」は、自然界の進化の原則や遺伝的なメカニズムに基づいた問題解決手法です。
個体群内で最も適応度の高い個体が生存し、繁殖することでより優れた解を見つけ出します。

この説明をみると、ライターは昔懐かしい「メンデルの法則」を思い出します。
インゲン豆の交雑で優生劣性に仕分ける法則を見出したメンデルの法則です。

メンデルの法則と進化計算は、遺伝子の伝達や進化に関連する重要な概念を共有しています。
メンデルの法則では、遺伝情報が世代を通じて遺伝子として伝えられる方法が規定されており、
進化計算では個体の遺伝子プールが進化的なプロセスを経て最適化されます。

まず、メンデルの法則における「分離の法則」と進化計算の「交叉」という操作は、
遺伝子の多様性を生成するために類似しています。

メンデルの法則では親の遺伝子が分離され、新たな組み合わせが形成されます。
進化計算では、個体の遺伝子が交叉によって組み合わされ、新たな個体が生成されます。
両方のプロセスは遺伝的多様性を生み出し、適応度の向上に寄与します。

次に、メンデルの法則の「優性と劣性」の概念と進化計算の「適応度」の概念が類似しています。
メンデルの法則では、特定の遺伝子が優性を持ち、他の遺伝子よりも効果が顕著に現れることがあります。進化計算では、個体の適応度が優れた遺伝子や組み合わせに関連付けられ、環境に適応する能力が進化の過程で向上します。

さらに、メンデルの法則と進化計算は、遺伝子の突然変異が重要な要素であるという点で共通しています。メンデルの法則では、遺伝子の突然変異が新たな形質や遺伝子型の形成に寄与する可能性があります。進化計算では、突然変異操作によって遺伝子プールに新たな遺伝子が導入され、個体の多様性と進化の可能性が高まります。

このように、メンデルの法則と進化計算は、遺伝子の伝達、多様性の生成、適応度の向上、突然変異の重要性など、遺伝と進化に関連する重要な概念を共有しています。
これらの共通点は、生物の進化や遺伝子の変化を理解する上で重要な示唆を与えています。

実に…面白い。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□大成建設株式会社
リリースニュース:
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2023/230526_9544.html

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