大成建設
特殊塗膜吹付け補修工法『エバーショット工法』を開発。

sugitec

概要

大成建設株式会社(以下、大成建設)は、成和リニューアルワークス株式会社、ポゾリスソリューションズ株式会社と共同で、コンクリート構造物に特殊塗膜を吹付けて長寿命化を図る補修工法エバーショット工法』を開発しました。本工法の適用により、コンクリート構造物の耐久性が向上し長期にわたり劣化を防止できることに加えて、吹付け作業だけで補修できるため作業効率の向上により低コストでの施工が可能というリリースニュースをお届けします。

エバーショット工法

近年、寒冷地などでは冬季に使用する凍結抑制剤や融雪剤の影響による既設コンクリート構造物の劣化が顕在化しています。
これらの構造物では、薬剤使用に起因する内部鉄筋の腐食や膨張によって、かぶりコンクリートのはく落が広範囲に発生する場合があり、山岳トンネル坑口付近の側壁部においても同様の状況が確認されています。
一般的に山岳トンネルの覆工コンクリート補修工事では、炭素繊維シートや補修・補強板を用いた表面被覆工法が主体となっており、ひび割れなどの局部的な補修にはPCM(ポリマーセメントモルタル)も数多く用いられます。
しかし、こうした従来の補修方法はシートなどの貼付けや隙間へのモルタル充填が不十分な場合にはコンクリートのはく落防止が困難な状況となっていました。

そこで大成建設は2社と共同で、補修工法の幅広いニーズに応えるため、EVAポリマーを主成分とする特殊微粉末※1を吹付けて塗膜を形成することでコンクリート構造物を新たに表面被覆する補修工法『エバーショット工法』を開発しました。

本工法の概要および特徴は以下のとおりです。

『エバーショット工法』は、既設コンクリート劣化部分を除去した後、EVAポリマー特殊微粉末と水を練混ぜた溶液を吹付けて特殊塗膜を形成し、その上の表層部に保護層(仕上げ層)を施工する工法です。(図1参照)

図1 エバーショット工法概要図

STEP1:補修前に既設コンクリート表面の劣化部分のみを、ウォータージェット工法などを用いて効率的に自動で除去。

STEP2:劣化部分を除去した健全なコンクリートの表面に不陸調整層を施工した後、吹付け工法によりEVAポリマーを主成分とする特殊微粉末を水と共に4mmの厚さに吹付けることで、強固な劣化因子遮断層となるEVAポリマー特殊塗膜を形成。(写真1参照)

STEP3:特殊塗膜の乾燥後、表層部に仕上げ層となる保護層を吹付け工法により施工。(写真2参照)

写真1 EVAポリマーによる特殊塗膜の吹付け状況

写真2 保護層の吹付け状況

【特徴】(図1、表1参照)

1 水分、塩分を完全に遮断し長期にわたり劣化防止
EVAポリマーを主成分とする特殊微粉末によって形成される塗膜は、コンクリートおよび鉄筋の劣化因子となる水分、塩分を完全に遮断するため、補修後は長期にわたり劣化を防止できます。
特殊塗膜の優れた性能により劣化防止効果が持続することで、更新サイクルの低減が可能となります。

2 要求性能に応じて柔軟に対応でき、新設時の美観や性能を再生可能
保護層は、構造物ごとの要求性能に応じて、施工厚さ、材質を設計できます。
また、構造物の表面も新設時のコンクリート表面と同様の素材で仕上げることが可能で、美観の復活とともに新設時のコンクリート性能を再生できます。

3 コンクリート劣化部分の除去を省力化施工
既設コンクリートの劣化部分の除去は、手作業でのはつりのほか施工面積に応じてウォータージェット工法を選定できます。加えて、ウォータージェット工法は連続自動化による省力化施工も可能です。

4 保護層のはく離・はく落を防止し高速道路での要求性能を確保
特殊微粉末によって形成される特殊塗膜は、保護層と既設コンクリートとのクッション機能を有しており、地震により既設構造物に大きな変形が生じた場合でも保護層のはく離・はく落を防ぐことができます。既設コンクリートと特殊塗膜、特殊塗膜と保護層との引張付着強度は、日本高速道路株式会社(NEXCO)の要求性能(引張付着強度1.5N/mm2)を満足することが2年以上に渡る長期の性能検証実験と試験施工により確認されています。

5 従来の補修工法に比較して10%コスト削減可能
不良個所の事前調査や除去作業に必要な費用はどの工法も同等ですが、本工法はその後の作業を吹付け工法で施工することで作業効率が格段に向上し、パネル系、シート系など従来の補修工法と比較して10%のコスト低減を可能としています。また、補修面積の増大に従って、更なるコスト低減効果も期待できます。

今後、大成建設ほか2社は、本工法の採用をボックスカルバートや山岳トンネルの覆工コンクリートなど数多くのコンクリート構造物のリニューアル工事に積極的に提案するとともに、既設コンクリート構造物の新たな補修工法として普及展開を図ってまいります。

表1 本工法と従来工法の比較

※1 EVAポリマーを主成分とする特殊微粉末:
EVAは高い柔軟性と弾力性を持つ優れた樹脂のひとつです。今回採用したEVAポリマーは、水と練混ぜるとすばやく一様に分散して、吹付け工法で施工可能となります。吹付け後、乾燥すると表層にEVA樹脂の特殊塗膜が形成され、耐久性が向上します。

資料引用:大成建設

おわりに

EVAは汎用性に優れた素材であり、スポーツ用品から日用品まで様々な製品に利用されています。
スキーブーツやサドル、スポーツ用具、シューズなどで使用されるだけでなく、漁業用浮きや太陽電池の製造にも活用されます。また、サンダルやスリッパの素材としても優れており、軽量で作りやすく、匂いがなく光沢もあり、コストパフォーマンスにも優れています。
この度のリリースニュースからも、一次分散剤としても塗料に使用され、幅広い用途で活躍しています。このようにEVA素材はその多機能性から、さまざまな産業分野で重要な役割を果たしています。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□大成建設株式会社
リリースニュース:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2023/230707_9588.html

□成和リニューアルワークス株式会社
http://www.seiwarw.co.jp/

□ポゾリスソリューションズ株式会社
https://mbcc.sika.com/ja-jp

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