大成建設
移動式3Dプリンティング技術を開発。

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概要

大成建設株式会社(以下、大成建設)が、「生産プロセスのDX」の一環として、多関節ロボットと建設用3Dプリンティング技術を融合した製造装置により、大型の鉄筋コンクリート部材(以下、大型RC部材)の現場施工を可能にする移動式3Dプリンティング技術を開発というリリースニュースをお届けします。

大型RC部材の現場施工技術で生産性向上に貢献

本技術の適用により、3Dプリンティングで製作可能な部材の大型化が実現するとともに、プリント用ノズルの三次元的なアプローチによって適正な鉄筋かぶり※1での造形が可能となり、建設工事の更なる生産性向上が図れます。

大成建設は、2018年よりコンクリート構造物の新たな施工方法として建設用3Dプリンティング技術「T-3DP®(Taisei-3D Printing)」の開発を進めてきました※2、※3。2022年には大成建設独自開発の環境配慮コンクリートをプリント材料として活用することで脱炭素化を考慮した構造物の3Dプリンティングによる製作を実現し※4、2023年には斜面や曲面、凹凸面など任意の形状に沿わせてコンクリート構造物を構築できる業界初の3Dプリンティングによる施工技術を開発しました※5。このように「T-3DP」の適用範囲拡大に向けた取り組みは、建設工事の省人化や工期短縮、さらには脱炭素社会実現への貢献において着実な成果を上げています。

※1
鉄筋かぶり:コンクリート表面から鉄筋表面までの最短距離。水や酸素の作用により起こる劣化要因に対して十分な耐久性を満足するようにかぶりを設定することで、鉄筋が錆びるのを防ぐことができる。
※2
2018年12月10日 建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」を開発
建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」を開発 | 大成建設株式会社
建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」を開発のページです。大成建設株式会社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、自然との調和の中で安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいきます。
※3 2020年2月17日 国内初 建設用3Dプリンタで製作した部材でPC構造体を構築
国内初 建設用3Dプリンタで製作した部材でPC構造体を構築 | 大成建設株式会社
国内初 建設用3Dプリンタで製作した部材でPC構造体を構築のページです。大成建設株式会社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、自然との調和の中で安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいきます。
※4 2022年12月19日 国内初 建設用3Dプリンティングに適用可能な環境配慮コンクリートを開発
国内初 建設用3Dプリンティングに適用可能な環境配慮コンクリートを開発 | 大成建設株式会社
国内初 建設用3Dプリンティングに適用可能な環境配慮コンクリートを開発のページです。大成建設株式会社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、自然との調和の中で安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいきます。
※5 2023年6月7日 業界初 斜面や曲面に施工可能な3Dプリンティング技術を開発
業界初 斜面や曲面に施工可能な3Dプリンティング技術を開発 | 大成建設株式会社
業界初 斜面や曲面に施工可能な3Dプリンティング技術を開発のページです。大成建設株式会社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、自然との調和の中で安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいきます。

一方、従来の建設用3Dプリンティング技術は、製作可能な部材寸法が装置の可動範囲内に限定され、大型RC構造物への適用が困難となっていたことや、プリント材料を押し出す箇所へのノズルの動きが鉛直方向に限られ、基礎コンクリートなどから露出する鉄筋と装置本体やノズル部分の接触を避けるために通常より過大な鉄筋かぶりを必要とすることなどが課題となっていました。

そこで大成建設は、レール上を水平移動する多関節ロボットのアーム先端に装着したノズルを正確に制御することにより、三次元的に適切な量のプリント材料を連続的に押し出すことができる移動式3Dプリンティング技術を開発し、大型部材の製作と適正な鉄筋かぶりでの造形を実現しました。

「T-3DP」の適用範囲をさらに拡大した本技術の特徴は以下のとおりです。

3Dプリンティングによる大型RC構造物の施工を実現(写真1、図1参照)
本技術は、レール上を水平移動するロボットアームの先端のノズルを三次元的に制御して3Dプリンティングを行うことにより、最大長さ7.2mのRC部材を製作することができます。また、レールを延伸することで長さ7.2mを超える大型RC部材の製作にも対応可能です。さらに、本技術を用いて自由曲面を有する大型RC構造物の現場施工も実現できます。

写真1 ロボットの移動による造形状況

図1 3Dプリンティング可能な範囲

ノズルの三次元的なアプローチにより適正な鉄筋かぶりを実現(写真2、図2参照)
従来の3Dプリンティング技術は材料を押し出すノズルを鉛直に下ろしていたため、基礎コンクリートなどから露出する鉄筋に装置本体やノズル部分が接触しないよう間隔を空けてプリントする必要があり、結果的に鉄筋かぶりが15cm以上と過大になっていました。本技術は、複雑な動作が可能な多関節ロボットのアーム先端にノズルを装着することで、鉄筋近傍において斜め方向からアプローチする3Dプリンティングが可能となり、適正な鉄筋かぶりで部材製作を実現します。また、過大な鉄筋かぶりの適正化によって断面積が減少し、コスト削減に寄与します。

写真2 鉄筋近傍での施工状況

図2 鉄筋近傍での三次元的なアプローチ

今後、大成建設は、本技術の建設現場での実証により、さらなる生産性向上を図るとともに、3Dプリンティングで製作した構造体の力学特性や施工法などに関するノウハウを蓄積し、構造躯体への本格適用など本技術の実用化に向けた取り組みを進めてまいります。

資料引用:大成建設

おわりに

3Dプリンティング技術によるコンクリート部材プレキャストの一番の利点は、従来の季節や天候・職人の技量などの外的要因によって左右されるコンクリート製作が、工場での理想的な養生環境で行えるため、高品質・高強度のコンクリート部材を安定して、大量にかつ精密に製作できることでしょう。
現状はサイズが大きな躯体の様子ですが、ここからミニマルなサイズまでに製造されるなら、住宅部材への転用も可能なのではないでしょうか。


□大成建設株式会社
リリースニュース:
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2023/230925_9656.html

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