大林組 ✕ Spiral
ダム建設現場でドローンを活用した監査廊点検システムの実証実験を実施。

sugitec

概要

本日は二年前にご紹介した株式会社SpiralMark Flex®Air株式会社大林組の点検システムの実証実験に活用されたというニュースをお届けします。よろしければ、過去の記事も読んで頂けるとより技術理解が深まります。(https://www.innovation.sugitec.net/24934/


非衛星測位環境における点検作業の省人化と省力化を実現

株式会社大林組(以下、大林組)は、ダム監査廊※1点検作業において、自動飛行ドローンを用いた点検システムを開発し、株式会社Spiral(以下、Spiral)の協力のもと、大林組が施工中の川上ダム(三重県伊賀市)にて、点検作業における省人化、省力化に向けた実証実験を行いました。

資料引用:大林組 自動飛行ドローンによる点検システムの飛行概要

完成後のダムの点検作業は、ダムの管理者が監査廊を実際に歩いて、壁面のクラックや漏水の有無を目視で確認していますが、長距離の移動や急勾配の階段を昇り降りする必要があるため、肉体への大きな負担や転落災害などの危険を伴うことが課題でした。

このたび、これらの課題を解決し、点検作業における省人化、省力化のため、自動飛行ドローンを活用した監査廊点検システムを開発しました。

資料引用:大林組 階段の傾斜に沿って上昇飛行する自動飛行ドローン

自動飛行ドローンを活用した監査廊点検システムは、マーカーによって飛行を指示する手法「MarkFlex®Air※2を用います。

動画引用:Spiral
動画引用:Spiral

飛行動作に関する指令がひも付けされたマーカーを監査廊の階段の始点と終点、曲がり角といった、飛行動作が変化する地点の壁面に設置し、ドローンはそれに沿って飛行します。
そして、自動飛行しながら搭載したカメラで撮影した映像をリアルタイムで遠隔地のパソコンに表示・記録するので、管理者が現地に行かなくても現状の確認ができます。

自動飛行ドローンを活用した監査廊点検システムの特長は以下のとおりです。

衛星測位や自己位置推定ができなくても自動飛行が可能

飛行時は機体と床面、壁面の距離を常にレーザセンサで計測し、飛行位置を制御することで安定した飛行を行います。
レーザセンサと飛行動作に関する指令がひも付けされたマーカーを用いた制御により、衛星測位ができない屋内環境や、監査廊のような同一形状で特徴点が少なく、SLAM※3が使えない環境においても自動飛行が可能です。

また、川上ダムの監査廊のように約1kmにおよぶ飛行は、ドローンに搭載されたバッテリーの容量では継続して行うことは不可能ですが、飛行ルート上に充電ステーションを設置し、充電器に離発着し充電を繰り返しながら飛行することで、自動飛行が可能となります。

資料引用:大林組 曲がり角に設置されたマーカー
資料引用:大林組 川上ダムの監査廊イメージ

モニタリングシステムにより遠隔地から点検箇所の状況確認が可能

飛行ルート内の無線LANを介して、ドローンに搭載したカメラからの映像をリアルタイムで遠隔地のパソコンに表示し点検箇所の状況を確認することができ、専用のWebアプリケーションにより、過去の映像履歴やマーカー認識時の時刻、機体周辺の温湿度、バッテリー残量などの情報や、ドローン本体の大まかな飛行位置を記録することが可能です。

また、データを時系列で記録することにより、長期にわたる監査廊壁面などの経年変化を容易に比較できます。

資料引用:大林組 専用Webアプリケーション画面

今後の開発では、AIを用いた壁面におけるクラックの自動検出や、揚圧力※4を測定する圧力メーターの数値の撮影、自動読み取りとそれに基づく装置の自動制御など、さらなる技術の向上に取り組みます。また、監査廊以外にも衛星測位ができない環境での点検作業への適用も検討していきます。


大林組はドローンを用いた自動点検システムを活用することで、省人化、省力化による管理者の安全確保と負担軽減に貢献していきます。

※1 ダム監査廊
ダムの堤体内部に備わるトンネル(地下道)の形状をした管理用の通路であり、監査(検査、点検、測定)やゲート操作、排水、グラウト作業などに用いられる。

※2 Mark Flex Air
Spiralの特許技術。GPSが届かない屋内でも独自のマーカーを用いてドローンの自動飛行を可能にする手法。

※3 SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)
自己位置推定と周辺環境の地図作成を同時に行う技術。

※4 揚圧力
ダムが設置されている岩盤などに浸入した水により、ダムの堤体を浮き上がらせようとする力。

おわりに

上記の写真から察するに…マーカーの貼り付けは人の手によるもの。

広域の施設を考えれば、定期診断ごとにその貼り付け作業を行う必要が調査班に課されると想定されるので、施設内にマーカータグなりを埋め込むなどしないかぎり、繰り返しの作業が増えるのではと、個人的な感想でクローズしてしいまいますが、まだ実証実験が始まったばかりですから、今後の改善進捗を期待したいと思います。

本日も読んでいただき、ありがとうございました。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□株式会社大林組
リリースニュース:
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220802_1.html
コーポレート・コミュニケーション室 広報課

□株式会社Spiral
https://spiral-robotics.com/

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