ポーラ・オルビスグループの株式会社ポーラメディカル(以下、ポーラメディカル)と株式会社安藤ハザマ(以下、安藤ハザマ)は、近年、課題感が強まる建設現場の暑さ対策として、暑熱対策AIカメラ『カオカラ』を用いた海外建設現場での実証試験および国内建設現場での全社導入を開始し、ラオスおよびネパールの土木・建築現場における『カオカラ』の有用性の検証と、国内の土木・建築現場における安藤ハザマの社内標準ビジネスチャットツールである『direct』とのリアルタイム連携の実証を通じて、暑熱対策のさらなる先進的取り組みを加速しているというリリースニュースをおとどけします。
DXによる建設現場の暑熱対策の向上を目指して
海外建設現場での実証試験を実施
世界各国で年々気温が上昇するなか、暑さ対策は日本国内に留まらないグローバルな課題です。
暑熱対策AIカメラ『カオカラ』は、2024年に日本国内の数百の建設・土木現場、製造業で使用され、約40万件の顔画像をもとに判定アルゴリズムの改良を進めてきました。
日本国内の建設現場では、作業員に一部外国籍の方が含まれるものの、肌色や顔立ちの多様性には限界があり、AIの判定における人種的バイアスや汎用性に対する課題が残されています。
一方、ラオスやネパールといった地域は、高温多湿あるいは高地など、日本とは異なる厳しい気候条件に加え、多様な人種・顔立ちを有する作業員が建設現場で働いており、『カオカラ』の国際的な適用性を検証する上で極めて有効な環境です。そのため、『カオカラ』の有用性・運用性について、ラオスおよびネパールの土木・建築現場において、実環境での検証を開始します。
これにより、現地での暑熱対策の向上とともに、さまざまな国々での活用を前提としたグローバル展開に向けた機能強化を目指します。

海外建設現場における実証イメージ
国内建設現場における『direct』連携による、リアルタイムでのチャット通知機能を開発
地球温暖化やヒートアイランド現象等により年々気温が上昇しているなか、建設現場では熱中症ゼロに向けてさまざまな暑熱対策を実施しています。また、個人の判断による水分・塩分補給や涼しい場所での休憩だけでなく、周囲とのコミュニケーションなど、建設現場が一体となり、早期の暑熱対策を講じる必要があります。
そこで、『カオカラ』で4段階判定のうち「オレンジ」および「赤」の高リスク判定結果が出た場合、即時に『direct』のグループチャットへ自動通知する連携機能を新たに開発しました。本機能により、管理者がリアルタイムに技能者の顔画像と高リスク判定結果を把握でき、迅速な水分・塩分補給や休憩指示などの初動対応が可能になります。さらに、自動通知は複数の管理者間でリアルタイム共有されるため、情報の属人化や対応の遅れを防ぎ、チームとしての管理体制の強化につながります。

『カオカラ』と『direct』の連携フロー
今後の展開
今回の実証試験で得られる課題や知見を活かし、暑熱環境における対処支援のグローバル化・高度化を推進するとともに、建設現場における“熱中症ゼロ”へ向けた機能の改善を進めていきます。
また、多業種への展開や各種業務アプリケーションとの連携、AI精度の継続的向上に向けた取り組みを推進します。
【補足資料1】 暑熱対策AIカメラ 『カオカラ』について
カメラに顔をかざすことで、顔の情報を検出するタブレット型AI機器です。判定結果を使用者と管理者に色でお知らせすることで、現場の安全管理に役立つことが期待されます。
1)メカニズム
専用に学習したAIにより顔色・表情・発汗を解析し、外気温や湿度などの環境情報と統合して使用者本人に体調の変化に気付きを与えます。
※ 本機器は、熱中症の治療、診断、予防を目的としたものではなく、医療機器ではありません。
2)使用性
専用タブレットを設置し起動すれば使用可能で、簡便な管理運用が期待できます。判定にかかる時間は約3秒です。4段階の色で示されるため、お客様からは直感的で分かりやすいとの声をいただいています。
3)現場での一元管理
結果は一元集約され、管理者はパソコンなどで結果履歴を確認できます。赤色表示の方に優先して声掛けができるなど、効率的な対策に役立てることが期待されます。

【補足資料2】 ビジネスチャットツール『direct』について

お客さまの声とともに進化を続ける現場向けビジネスチャット『direct』は、文字のやりとりだけでなく、現場で撮った写真や図面ファイルを使った情報共有、緊急時の連絡手段として、現場で働くフィールドワーカーの方々に広くご活用いただいています。
導入企業は5,500社を超え、建設やインフラ、設備、製造、流通、小売、金融、不動産などさまざまな業界の現場で広がっています。
資料引用:ポーラメディカル/安藤・間
おわりに
暑熱対策AIカメラ「カオカラ」は、タブレット型のAI機器で、顔色、表情、発汗を解析し、外気温や湿度などの環境情報と統合することで、使用者の体調変化を検知する身近なシステムに感じます。
現場の安全管理を目的としており、約3秒で4段階の色で体調を直感的に表示し、判定結果を一元管理して高リスク者への優先的な声かけを可能にします。
今回は日本国外での建設現場での使用実証実験でしたが、今後の展開を考えると、「ポーラ」というブランド力をもと、一般生活の中での「世界標準」で使用できる環境を展望できるのはないでしょうか。
現在、欧州では近年、記録的な熱波が頻発しており、特に2025年7月初旬にはスペインで46℃、フランス・パリで39℃を超えるなど、異常な高温が観測されています。
これにより、死者が出たり、学校が閉鎖されたり、原子力発電所の稼働が停止したり、観光名所であるエッフェル塔が閉鎖されるなど、人々の生活や社会インフラに深刻な影響が出ています。
欧州は他の地域と比較して2倍の速さで温暖化が進んでおり、エアコンの普及率が低いことも相まって、熱中症への対策が喫緊の課題となっています。
このような背景を鑑みると、「カオカラ」の一般利用には以下のような展望が考えられます。
「カオカラ」の一般利用の展望
□職場環境の多様化への対応
現在、主に現場の安全管理に利用されている「カオカラ」は、建設現場だけでなく、オフィス、工場、倉庫、農業、屋外イベント会場など、あらゆる業種の職場に導入されることで、従業員の熱中症リスク管理を飛躍的に向上させることができます。特に、欧州の多くの地域でエアコンが普及していないことを考えると、従業員が自身の体調変化に気づき、迅速な対応を促すツールとして非常に有効です。
□公共空間での活用
熱波の影響を受ける公園、観光地、駅などの公共空間に「カオカラ」を設置することで、市民や観光客が自身の健康状態を手軽にチェックできるようになります。例えば、エッフェル塔のように熱波で閉鎖されるような場所でも、事前に利用者の体調を把握することで、危険な状況を回避するための情報提供や注意喚起が可能になります。これにより、より安全な都市生活や観光体験を提供できるでしょう。
□高齢者・脆弱層の見守り
熱波による死亡者の多くが高齢者であることを踏まえると、「カオカラ」は高齢者施設や地域コミュニティ、さらには在宅の高齢者への導入も期待されます。体調変化を早期に検知し、介護者や家族に通知することで、重症化する前に適切な対応をとることが可能になり、熱中症による悲劇を減らすことに貢献できます。
□学校や教育現場での導入
熱波により学校が休校となるケースが報告されている欧州において、「カオカラ」は子どもたちの熱中症対策に有効です。登下校時や体育の授業前後などに体調チェックを行うことで、子どもの健康状態を把握し、教員が適切な休息や水分補給を促す判断材料となります。
□大規模イベントやスポーツ分野での活用
マラソン大会や音楽フェスティバルなど、参加者が長時間屋外にいる大規模イベントやスポーツイベントでは、主催者が参加者の体調をリアルタイムで把握することが困難です。このような場面で「カオカラ」を導入することで、参加者の熱中症リスクを管理し、緊急時には迅速な介入を行うことが可能になります。
□データ連携と都市計画への寄与
「カオカラ」によって集約された体調データを地域全体の環境情報と組み合わせることで、熱中症リスクの高いエリアや時間帯を特定し、より効果的な暑熱対策の計画立案に役立てることも考えられます。これは、欧州が直面する気候変動への適応策としても重要な役割を果たすでしょう。
□課題と今後の展望
一方で、特に厳格なEU諸国はプライバシー保護の観点(顔情報を使用するため)、導入コスト、そして、各国の規制や文化への適合といった課題も考えられます。
これらの課題をクリアし、技術的な精度向上と利用者の利便性を追求することで、「カオカラ」は欧州の熱波対策において、個人の健康維持から社会全体のレジリエンス向上まで、多岐にわたる貢献が期待できるのではないでしょうかと、まとめとして、38℃の京都から本日は筆をおきます。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社ポーラメディカル
問い合わせ窓口
Mail: poh_polamedical_contact@po-holdings.co.jp
□株式会社安藤・間
リリースニュース:https://www.ad-hzm.co.jp/info/2025/20250701.php
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
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