4種ロボット開発・実証で標準化技術を創出、労働力不足解決へ
株式会社竹中工務店(以下、竹中工務店)、鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)、株式会社大林組(以下、大林組)、株式会社フジタ(以下、フジタ)は、建設RXコンソーシアム※1の活動を通じて、4社の共同提案体により、ソフトウェアの標準化技術を活用した建設ロボットシステムの研究開発※2に着手というリリースニュースをおとどけします。
建設現場向けの4種類のロボットシステム(①資材自動搬送、②風量測定、③耐火被覆吹付け、④汎用移動ロボットの多機能化)の研究開発と実証を通じて、様々なロボットで共通利用できる標準化技術を創出し、建設業界全体の労働力不足の解決に貢献していきます。

※1 建設RXコンソーシアムは、建設業界が抱える就労人口の減少、生産性・安全性の向上などの諸課題の解決に向け、施工ロボットやIoTアプリ等の開発と利用に係るロボティクストランスフォーメーション(ロボット変革)を推進すべく、2021年9月に設立した民間団体
※ 2 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「デジタル・ロボットシステム技術基盤構築事業」で実施
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101875.html
開発の背景

建設業界では、技能労働者の高齢化や新規入職者の減少により深刻な労働力不足が課題となっています。また、従来の建設ロボット開発は、個別用途に特化したハードとソフトが一体化されたシステムが主流で、開発した技術を他のロボットに転用できないなど汎用性が低く、多様なロボットシステムを効率的に創出することが困難でした。
このため、標準化されたモジュールを活用した効率的なロボット開発手法の確立が求められています。
開発の概要
各社が以下の4つの研究開発を推進し、汎用的なSIモジュール※3を組み込んだロボットシステムの幅広い活用を実現します。
① 資材自動搬送ロボットシステムの開発(竹中工務店)
・日々変化する建設現場環境での高精度自律走行技術
② 風量測定ロボットシステムの開発(鹿島建設)
・BIM連携による自律走行型検査・帳票作成技術
③ 耐火被覆吹付けロボットシステムの開発(大林組)
・環境認識ロボットとの連携による吹付け作業計画修正技術
④ 汎用移動ロボットの多機能化技術の開発(フジタ)
・移動ロボットの多機能化を目的とした作業アタッチメント開発
※3 システムインテグレーションモジュール。
ロボットを動かすために必要なソフトウェアモジュール(自己位置推定、経路計画、物体検知等のプログラム部品)であり、様々なロボットで共通して使えるように標準化されたもの
今後の展望
本研究開発により、ロボットシステムの開発・運用コストの削減を目指します。
また、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ロボティクス分野におけるソフトウェア開発基盤構築」との連携により、より高性能なロボットシステムの効率的な実現を目指します。
将来的には、開発される汎用的なSIモジュールを建設分野のみならず他のサービス分野にも展開し、日本のロボティクス産業の国際競争力強化につなげていきます。
資料引用:竹中工務店
おわりに
このプロジェクトの核心は、ロボットの「頭脳」となる汎用的なSIモジュール(ソフトウェアの標準化)を確立することです。
【フェーズ1:個別の自動化】 (2025年〜2029または2030年)
まずは資材運搬、風量測定、吹付けなどの個別業務を確実に自動化し、現場の負担を軽減します。
この過程で、共通して使える標準化されたSIモジュールを確立。
ここのスパンはNEDOの「デジタル・ロボットシステム技術基盤構築事業」の期間(2025年度〜2029年度)と一致するでしょう。この間に、4種類のロボットの実証と汎用SIモジュールの初期版を確立することが目標となります。
周知の様に2024年問題後の労働時間規制の定着と、2025年問題(高齢者の大量離職)が加速する局面であり、現場は喫緊の対策を求めています。
【フェーズ2:システム化と多用途展開】 (2030年〜2035年)
標準モジュールを使い回すことで、次に必要となる清掃や溶接など多用途ロボットの開発コストと時間を大幅に削減します。
これにより、現場全体がロボットが連携し合う効率的なシステムへと進化。
2030年からは、i-Construction 2.0で目標とされる「建設現場のオートメーション化」が本格化する時期です。SIモジュールの確立により、安価で多様なロボットが現場に普及し始め、複数ロボット間の連携が進みます。現場の「省人化3割」(国土交通省目標)に向け、最も劇的な変化が起こる時期と予想されます。
【フェーズ3:未来の建設現場と社会貢献】 2035年以降
最終的には、この標準化技術を他産業へも展開し、日本のロボティクス産業全体の国際競争力強化に貢献します。
熟練工の技術が必要な作業はロボットが担い、人はより高度な管理や創造的な業務に集中できる、建設業界が目指す「ロボティクストランスフォーメーション(建設RX)」の実現へ
2035年以降は、建設分野での成功を基に、確立されたSIモジュールがインフラ点検、災害対応、物流、農業などの非製造業全般に広がり始めます。
建設業界としては、ベテランの大量退職後も持続可能な生産体制を確立し、技術を輸出し始めることで「日本のロボティクス産業の国際競争力強化」という最終目標を達成します。
ちなみに…AIが人類の知能を超える転換点、「シンギュラリティ」が2040年…
その前の段階でフィジカルAIを搭載した「レイバー」が同僚という日は近いということでしょう。
本研究開発は、労働力不足という深刻な課題に対し、「個別特化」から「横断的なシステム化」へと現場改善のステップを根本的に変える大きな一歩となるリリースニュースからでした。
【本件に関するお問い合わせ先】
□株式会社竹中工務店
リリースニュース
https://www.takenaka.co.jp/news/2025/10/07/
