株式会社奥村組(本社:大阪市阿倍野区、代表取締役社長:奥村太加典 以下、奥村組)は、既存鉄筋コンクリート(以下、「RC」)構造物の補強工事に用いられる、あと施工アンカーを用いた天井の増厚工法における削孔作業を自動化する装置を開発というリリースニュースをおとどけします。
天井用削孔装置
背 景
既存RC構造物の耐震補強工事では、天井や壁などの増厚工法において、増し打ちコンクリートとの一体性を高めるためにアンカー筋を既存構造物に埋め込みます。
アンカー筋を挿入する孔(挿入孔)は通常、電動ハンマードリルを用いて人力で削孔しており、数千箇所にも及ぶ場合もあり多大な労力を要することから、省力化・効率化が求められていました。
特に天井面の削孔作業は上向きの姿勢で行うため身体への負担が大きく、これらを軽減するための専用装置の開発が強く望まれていました。
奥村組では側壁用削孔装置を開発し現場適用してきましたが、天井の削孔には未対応であったため、このたび新たに天井用削孔装置を開発しました。
◆2020/08/18ニュースリリース
既存鉄筋コンクリート構造物の補強工事に伴う削孔作業を対象とした 自動削孔装置を開発
https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/data/200818.pdf
◆2022/03/29ニュースリリース
小径用自動削孔装置の高度化および実工事への適用 -既存RC構造物の補強工事に伴う削孔作業の自動化-
https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2022/-rc.html
概 要
本装置は、電動ハンマードリルを用いて、径が小さく比較的浅い挿入孔(最大削孔径:25mm程度、最大削孔長:400mm程度)を削孔できます。電動ハンマードリルは、昇降・前後・左右方向にそれぞれ最大600mm移動可能です。また、装置にかさ上げ治具を積み重ねることで、0.1mピッチで最大0.5mまでかさ上げでき、施工可能な天井高は2.0m~3.0m程度になります。



かさ上げ治具による装置の高さ変更
位置合わせは、装置に一体化された2台のレーザー墨出し器を用いて行います。
天井面に照射するレーザーの交点は、削孔ビットの中心に合致するように調整しており、前後・左右への移動はペンダントスイッチで操作して行います。
移動後は、設定した計画に従って自動で削孔を行い、深さ、数量、削孔時間などの施工結果データを記録します。
自動削孔中にビットが既存RC構造物内の鉄筋などに接触した場合は、速度変化を検知して自動停止し、損傷を最小限に抑えることができます。
また、削孔中に発生する粉塵は集塵機により飛散を防止し、作業環境の改善に寄与します。

レーザー墨出し器による位置合わせ
コンクリート試験体を用いた性能確認試験では、位置・深さが人力施工と同等の精度を確保しながら、省力化、効率化が図れることを実証しました。

性能確認試験
今後の展望について
既存RC構造物の補強工事における生産性をより一層向上させる技術として、本装置の適用を積極的に提案していきます。
資料引用:奥村組
おわりに
建設業界において、天井への削孔作業は「上向きの姿勢」「振動」「粉塵」という三重苦を伴う、最も過酷な工程の一つです。
今回発表された奥村組の自動装置は、まさに現場の切実な課題に対する「技術の回答」と言えるでしょう。
こうした装置が「普及版」として当たり前の存在になる時期を推論すると、まずは今後3〜5年で大手ゼネコンの大規模現場における標準装備となるはずです。
その後、装置の小型化やレンタル市場への流通が進むことで、2030年代初頭には、私たちが手にする「スマホ」のように、あらゆる耐震補強現場で見かける存在へと定着していくのではないでしょうか。
人手不足が深刻化する中、技術の役割は「効率化」だけでなく、労働者を過酷な環境から解放する「守り」の側面が強まっています。
「機械にできることは機械に任せ、人はより高度な判断に集中する」。
そんな建設DXが、この一台の装置をきっかけにまた一歩、現実味を帯びてきました。
普及までの時間は、私たちが技術をいかに信頼し、投資できるかという「現場の意識変化」のスピードそのものかもしれません。
【お問い合わせ先】
□株式会社 奥村組
技術本部 技術研究所 企画管理グループ
リリースニュース:https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2026/post-71.html
TEL:029-865-1521
FAX:029-865-1522
E-mail:giken@okumuragumi.jp
【開発担当】
株式会社 奥村組
技術本部 技術研究所 土木研究グループ 川澄