鹿島建設
大量資材のトレーサビリティ管理を可能にする「Kトレース®」を開発。

sugitec

概要

鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は、建設現場で大量に扱う建設資材の個別情報をWEB上に登録し、GNSSで取得した位置情報と紐付けることで、大量の資材の位置情報を瞬時に把握できるシステムKトレース」を開発。丸亀城石垣崩落復旧整備事業の現場でどう実証されているのかを見つめます。
※認識番号、寸法、重量、写真などの情報

丸亀城で1万個以上の石材の位置情報を把握できることを実証

このKトレースを鹿島建設が香川県丸亀市で施工中の「丸亀城石垣崩落復旧整備事業」(2018年の台風で崩落した石垣の復旧工事)における石材管理に採用しました。

本整備事業では、10,000個以上の石材を同市内の3箇所の仮置き場で保管・管理する必要がありますが、Kトレースを用いることで大量の石材を簡易・迅速・正確に一元管理できることを実証しました。

このKトレースの特長を活かし、鹿島建設では厳密なトレーサビリティ管理が求められる廃棄物管理にも採用しており、今後、その範囲を拡大していきます。

Kトレースで石材を検索する様子と検索結果画面

仮置き場にて保管中の大量の石材

開発の背景

建設現場では、大量の資材を仮置き場に保管し、適宜抽出して使用する場面があります。

その際、仮置き場においては、類似した資材が多数存在する、また、資材を置く順番と使用する順番が異なる等、使用資材の選定間違いが発生し易い状況があります。

その対策として、各資材の認識番号等の個別情報と位置情報を仮置きの際に記録・保存する方法等が実施されていますが、これを手作業で行う場合、人為的な間違いが発生する懸念があります。また、記録作業や資材を抽出する作業に多大な労力と時間を要することも課題でした。

本システムの特長・効果と作業手順

本整備事業にKトレースを採用した結果、広大な仮置き場においても、大量の資材の中から目的の資材を瞬時かつ正確に検索し、石垣復旧に必要な石材を最小限の時間で抽出できることを確認しました。
また、Kトレースの採用により誤った石材の抽出による手戻り作業を防止できるため、工程の遅延を回避することができます。

<作業手順> 
本整備事業におけるKトレースでの作業手順は以下のとおりです。

回収した石材情報の記録
崩落および解体した石垣から発生した各石材に対して、認識番号、寸法、重量、各面の写真等の個別情報をKトレースに登録

石材仮置き時の位置情報の記録
3箇所あるいずれかの仮置き場に石材を搬入し、石材の位置が確定したらKトレースを起動してGNSSによる測位を行い、位置情報と個別情報とを紐付けて保存

使用石材の検索と選定
石垣立面図及び番付図を基に、作業日に使用する石材の認識番号をKトレースで検索すると、
仮置き場名と石材の位置を瞬時に表示

※本事業では数cm単位の精度が求められるため、測位精度が高い「ichimill」(SoftBank社提供の測位サービス)を使用

仮置き場で石材の測位をする様子

Kトレースの画面(スマートフォン画面)左が石材検索画面、右が検索結果画面

<特長と効果>

  • 個別情報と位置情報とを紐付けて保存し、検索により地図上に瞬時に表示できるため、大量に存在する資材から必要な資材を簡易・迅速・正確に抽出可能
  • 個別情報と位置情報とが自動的に紐付けられるため、記録時の人為的な間違いが生じない
  • 測位サービスを付加することで、より正確な位置情報(水平精度±5cm)の把握が可能
  • データはクラウドサーバに自動保存されるため、記録用PCなどからデータを移行する手間がなく、保存と同時にRPAでデータ処理することも可能
  • WEB上のシステムのため、インターネットに接続できる環境であれば、スマートフォンやタブレットなどのデバイス機器での利用が可能

Kトレースのさらなる活用

本整備事業では、Kトレースを石材管理に採用しました。
他方、個別情報と位置情報とが自動的に紐付けられるKトレースの特長を活かし、除染工事で生じた除去土壌・汚染物質を含む廃棄物など、トレーサビリティの把握が厳密に求められる廃棄物等の管理にも採用を進めています。
また、造成工事に採用することで、盛土の品質管理データ等の地盤調査結果と位置情報を紐付けて管理することもできます。

今後の展開

今後、本整備事業での検証結果を基にKトレースのさらなる機能向上を目指すとともに、地盤調査技術などとの連携により導入範囲を拡大していきます。

事業概要

事業名:丸亀城石垣崩落復旧整備事業
工事場所:香川県丸亀市一番丁 丸亀城内
発注者:香川県丸亀市
設計施工:鹿島建設株式会社
諸元:石垣復旧面積 約2,630m2(帯曲輪1,160m2 三の丸1,470m2)石材回収個数 約11,000個
工期:2019年3月~2028年3月(予定)

資料引用:鹿島建設

おわりに

丸亀城は丸亀市街地の南部に位置する亀山を利用し、縄張りはほぼ四角形で亀山の廻りを堀(内堀)で囲む、渦郭式の平山城です。石垣は、緩やかであるが荒々しい野面積みと端整な算木積みの土台から、頂は垂直になるよう独特の反りを持たせる「扇の勾配」と呼ばれ、山麓から山頂まで4重に重ねられ、合わせると60メートルになり、総高としては日本一高い石垣です。三の丸石垣だけで一番高い部分は22メートルもあります。しかし、あくまで総高としての日本一であり、単体としての日本一高い石垣は大坂城です。そんな総高の石垣が2018年の台風で崩落してしまします。

丸亀城跡の全域は国の史跡に指定されており亀山公園となっており、天守のほかに大手一の門・大手二の門・藩主玄関先御門・番所・御籠部屋・長屋が現存、そのうち天守・大手一の門・大手二の門は重要文化財に指定されています。大手門と天守が両方とも現存しているのは丸亀城と、弘前城と高知城のみという日本の城郭として貴重な存在です。

文化庁の主導で1988(昭和63)年から稼働した中近世城郭緊急保存整備事業をかわきりに、石垣を「歴史の証人」と位置付けた上で、事前・平行の発掘調査を伴う解体修理の実例が増え、現在では石垣の時代相を考慮に入れた修理・復元方針の検討と、そのための事前調査や解体時の記録化が常識となっています。そこに、もとの石垣一つ一つにトレーサビリティの情報を付加して修復する鹿島建設の「Kトレース」が寄与する意義は大きいと言えるでしょう。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202304/6c1-j.htm
動画でみる鹿島の土木技術「ICT・DX」
https://www.kajima.co.jp/tech/c_movies/index.html#anc_ict

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