建設現場災害防止へ向けVR体験型の安全衛生教育システムが開発

sugitec

こんにちは。ヴァーチャルリアリティのVRが元年を迎えたと言われてから早4年程が経ちます。その頃と比べて圧倒的に技術が進化したのか?と言われれば少し疑問はあります。

映像が綺麗になった、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)がより軽量になった、等、ハードウェアの進化は勿論あるとは思いますが、まだまだARのように技術が一般的にまで拡大してきているという印象はなく、所謂キャズムを超えてはいないと言えそうです。

しかしそれは一般層までを見た話で、産業業界に関してはVRの活用が進んでおり、BIMと組み合わせて遠隔操作を行ったり、VR空間内での設計や、人材の教育、安全教育等、その業務用途も拡大しています。

本日は「東急建設株式会社」「バンダイナムコアミューズメントラボ」の技術支援の下、VR体験型の安全衛生教育システムを開発したという話題がありましたのでそちらをご紹介。

施工中の建設現場で協力会社作業員50人が災害事故を疑似体験

「Tc-vow(ティーシーバウ)」と呼ばれるこのVRシステムですが、同社が3年前から開発・導入しているものとなり、今回そのシステムの新たなコンテンツの一つとして「安全衛生教育システム」が開発されています。

その新しく開発されたコンテンツとしては、「建設機械・クレーン等の災害」「崩壊・倒壊災害」の2つのコンテンツとなっており、それを現在施工中のトンネル工事現場にて協力会社の作業員約50名を対象とした安全教育を実施されています。


出典:東急建設

このVRシステムは、建設現場の災害事故の撲滅を目指して作られており、体験者がVR空間内で災害事故をリアルに疑似体験することでその原因を考え、災害事故発生防止のために自らの取るべき行動を学習することを目的とし、同社ではこれまでにこのVRシステムを、自社の現場従業員・協力会社を対象とし、累計で約300名の安全教育に活用してきたそうです。

今回は3日間で約50名の作業員が体験するという大規模な教育となり、終了後も引き続き多くの現場に展開していくことで、建設現場で働く作業員や協力会社の安全意識の向上を図るとのこと。


出典:東急建設

システム概要

このシステムでは、数多くのゲームコンテンツに取り入れられているという、感情や心理といった人間の行動心理に影響を及ぼす「ストーリー性」を持たせることで、建設現場の災害事故に至る過程をVR空間でリアルに再現しているとのこと。

一般的な安全衛生教育では災害事故事例を用いた教本や教育映さ像、などの受動的な学習が主体となってしまいますが、このVRシステムではVR空間内の現場で実際に手足を動かしたりしながら、高い没入感をもって学習可能。


出典:東急建設

また従来の体験型教育では、体験者に模擬的行動を習得させることを目的としていましたが、今回のものでは災害防止の主な原因となる「気づき忘れによるミス」「横着する」など、体験者本人が実際に起こしそうな不安全工法を誘発しやすいような状況設定になっており、敢えて災害事故をおこさせて安全意識を換気させることで安全意識を高め、災害事故の撲滅に大きく寄与されることが期待されています。

体験した作業者からの感想は

土工事作業員:19歳
「クリアするのが難しくゲーム感覚で取り組めた。自身の些細なミスが災害事故につながる疑似体験をしてみて、想像以上に細かな安全点検が必要であるということを学ぶことができた。今後実際の作業中に今日体験した映像がフラッシュバックするかもしれない。」

土工事作業員:64歳
「安全意識を高く持ち続けるには教科書どおりに覚える以上に、自分の頭で考えることが必要と考えている。そういう意味でこのシステムは災害事故の原因を自分で考えることができるため非常に有効で、若者からベテランまでどんどん体験すべきである。実際にやってみるとすごくドキドキするし、事故を起こした場面の映像は印象的で頭に残る。」

まとめ

システムはさらなる状況に応じたコンテンツの追加や、昨今では建設業界での外国人作業員が増加している現状を踏まえた英語版の開発も進めているとのこと。

現状の安全衛生では資料と映像によるものが殆どであり、それが悪いという訳ではないと思いますが、やはり当事者として自らの頭で考えるという部分が重要であり、資料と映像から実際の現場でそれを想定し考えるというのは、普段からかなり意識しておかなければなりません。

体験型の場合、想像上ではなく仮想空間とは言え実際の状況下に置かれることから、そこから学べる事は資料や映像とは比較にならないくらいに情報量の多い体験となります。何事も経験が大事、というのはどんな業界でも言われることですが危険を伴うこと、ましてやまさに事故が起こる状況を普通は経験することができないため、それが可能になるVRの強みはそこにあると言えるでしょう。

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