フジタ✕河本組
高揚程で水質汚濁の無い「ハイリフト無濁浚渫工法」を開発。

sugitec

概要

株式会社フジタと株式会社河本組が共同開発した、ダム取水口近傍で発電を止めることなく堆砂除去できる「ハイリフト無濁浚渫工法」のリリースニュースをお届けします。


「浚渫」とは?

浚渫(しゅんせつ)は、港湾・河川・運河などの底面を浚(さら)って土砂などを取り去る土木工事のことです。

河川部においては、水源からの堆積土砂のため川底が浅くなり、河川の流量が確保できなくなることから、治水のために行われます。河川舟運(内陸水運)において、船舶の航路を確保するために、河川、運河で行われることが多く、内陸水運が盛んではなくなったあとも、主に港湾のある河口付近で行われることが多い土木工事です。

浚渫された土砂は、廃棄物扱いされるため、安易な投棄は認められないので、水底土砂判定基準による確認が必要です。一方、川砂はコンクリートの骨材や埋戻材などに重宝されることから、近隣の建設現場などで再使用、リサイクルされる状況にあります。

一方、工業用地などを確保するための埋立のために、土砂を確保するためにも浚渫が行われることがあり、ダムにおいて、沈殿物を取り去り、貯水量を確保するためにも行われます。
また、汚泥や底質汚染を除去するためにも行われ、完全な除去が行われない場合、逆に底質からの栄養塩溶出を助長するという研究結果もあます。

浚渫工事には、主に“ポンプ浚渫”と“グラブ浚渫”という2種類の方法があります。

ポンプ浚渫とは、ストローで吸い上げるように、土砂と海水を一緒に吸い上げて海底を掘り下げる工事のことをいいます。面積が広くて、大量の土砂を扱う場合に適しています。
(1)船の先端にある吸水管(きゅうすいかん)を海底におろして作業を始めます。
(2)吸水管の先端についているカッターが回転して、海底の土砂を切りくずしていきます。
(3)切りくずされた土砂は、船に内蔵されているポンプの力によって海水と一緒に吸い込まれ、
   船の後ろに続く長い排砂管(はいしゃかん)の中を通って、埋立地へと運び出されます。

資料引用:国土交通省 東北地方整備局 秋田港湾事務所

グラブ浚渫とは、海底の土砂をつかみ取って掘り下げる工事のことをいいます。
岸壁などの構造物の近くや、狭い場所での工事も可能で、ポンプ浚渫船より固い土でも可能です。
(1)船の先端には、大きなグラブバケットがついており、そのグラブバケットを海底におろして、
   クレーンゲームのように海底の土砂をつかみ取ります。グラブの大きさはさまざまですが、
   1度で2~5m3の土砂をつかむものから、20m3を超すものもあります。

(2)つかみ取られた土砂は、土運船(どうんせん)に積み込んで埋立地へと運び出されます。

資料引用:国土交通省 東北地方整備局 秋田港湾事務所

…とイラストをみても浚渫工事はかなり大掛かりな土木工事なのです。
本日はその浚渫工事をコンパクトで汎用性を兼ね備えた浚渫工法を開発したフジタ✕河本組からのリリースニュースをお届けします。

フジタ✕河本組=ハイリフト無濁浚渫工法

大和ハウスグループの株式会社フジタ(以下、フジタ)は、株式会社河本組(以下、河本組)と共同で、ダム湖の水質を汚濁させることなく、底に溜まった土砂堆砂を20m以上の吸い上げ高さ揚程で除去可能な「ハイリフト無濁浚渫工法」を開発しました。

本工法は高性能な真空発生装置と、泥土を搬送するために独自開発した中継ポンプユニット「高濃度攪拌ポンプ」を搭載したハイブリッドシステムです。

真空吸引のみでは不可能とされていた水上10m以上の揚程でも効率よく堆砂を除去でき、
作業にともなう水質汚濁の発生を抑えた革新的な浚渫工法です。

広島県内4か所梶毛ダム、土師ダムほか電力系ダムのダム湖において実証実験と重ね、有効性を確認しました。

資料引用:フジタ 水中掘削機付き吸引機(左)と中継ポンプユニット(右)
資料引用:フジタ 水上作業設備

開発の背景

現在、堆砂により機能が低下しているダムは全国に100か所以上存在し、早急な対策が望まれています。

従来、堆砂を取り除くには、小型浚渫ポンプ船による方法かダム湖の水を抜くなどして重機を使用し除去する方法が一般的で、汚濁の発生が避けられませんでした。また、真空吸引による堆砂除去の方法では汚濁は発生しないものの、水深が深いダム等では使用できないという課題がありました。

本工法では、20m以上の揚程でも汚濁の発生抑えて堆砂を取り除くことができ、これまで汚濁の発生により難しかった水力発電所の取水設備近傍で、発電と同時並行の浚渫が可能となりました。

本工法の特徴

本工法は、湖底に接触する吸引部に水中掘削機付き吸引機を搭載し、2基の高トルク水中掘削機で湖底に堆積した土砂や粒径40mm以下の砂礫を掘削します。

その後、土砂が拡散する前に、吸引することで作業中の汚濁発生を防ぎながら堆砂を回収します。また、高濃度攪拌ポンプを併用することで、20m以上の揚程がある場合でも高い搬送能力を発揮します。

設備は細かく分割でき運搬性に優れるほか、大規模な設備が不要となり、コンパクトな施工が可能で、さまざまな条件に対応できます。

浚渫作業においては、真空発生装置と高濃度攪拌ポンプの併用による吸引・搬送作業と、最大10m3分の処理能力を有する大型の連続泥土回収タンクも開発したことで、従来必要であった吸引作業と土砂排出作業の切り替え動作を改善し、長時間の連続吸引作業を可能にしました。

施工管理においてはGNSS全球測位衛星システムを活用したICT施工管理システムにより、各所に取り付けたセンサーの数値、施工位置や施工履歴などの施工データをオペレータ室で管理し、リアルタイムに施工に反映させることができます。

資料引用:フジタ システム概要図

<本工法の能力>
ダム湖での実証実験では、水深20m、水上10mから堆砂除去が可能であることを確認しました。
さらに中間に高濃度攪拌ポンプを増設することで、更に水深が深いダム湖にも対応可能です。
浚渫の作業能力は625m3日の搬送を実現し、従来の小型浚渫ポンプ船と同等の能力で処理できます。

今後の展開

本工法により、さまざま制約があるダム湖の浚渫作業において新たな選択肢として提供するとともに、堆砂除去によるダムの長寿命化を支える技術として展開してまいります。

おわりに

政府がまとめた、猛暑や厳冬のピーク時を想定した電力需要に対して、どのくらい供給できる電力があるかの余力を示す「予備率」から、今夏は、東北・東京・中部の3電力のエリアで、最低限必要とされる3%。電力に余裕のある地域から不足する地域へ送電する広域融通を加味しても、ここ5年で最も厳しい数字です。

今冬はさらに厳しく、現時点の見通しでは、東京エリアは予備率がマイナスとなり、関西や九州など西日本の6エリアでも3%を下回っているのが現状です。これからは再生可能エネルギーの供給開拓が今後の日本のエネルギー事情を左右していくことになります。

実のところ、水力発電はわが国の電力供給の7.8%、世界全体の電力供給では16%を担い、ともに再生可能エネルギーによる電力供給では最大の比率を占めています。

水力発電は大規模水力、中水力、小水力、揚水式水力に大別され、日本では大正時代~昭和初期にかけて大規模水力の開発が進み、主力電源を担っていました。しかし、適地の減少や環境影響への懸念から、これ以上の大規模開発は困難です。

ですから、今後は既存の設備の更新・増強や、発電利用されていない既存ダムへの発電設備設置などによって出力の増加を図る方針に舵をきるべき時期なのです。中小水力はまだ開発の余地があるものの、発電コストが高いという課題があり、政府は固定価格買い取り制度をはじめとする政策的支援を通して導入拡大を図っています。
エネルギー貯蔵システムの一つである揚水式水力設備規模は、日本が世界第2位という潜在力に注目すべきです。歴史の遺産である日本の水力発電は将来の太陽光・風力発電の主力電源化に貢献する技術として期待されています。

こうした一国のエネルギー事情を加味すれば、水力発電の復興のためにも、ダムメンテナンスとしての「浚渫」工事は水量を効果的に貯えるために重要なメンテナンス工程です。その浚渫工事に革新をともしたフジタの工法に賛辞をお送りしたいと思います。


参考・関連情報・お問い合わせなど

【お問い合わせ先】
□株式会社フジタ広報室
〒151-8570 東京都渋谷区千駄ヶ谷 4-25-2 TEL 03-3402-1911
リリースニュース:
https://www.fujita.co.jp/_wp/wp-content/uploads/2022/08/Rwlease20220808.pdf

〇「浚渫」についての引用
□国土交通省 東北地方整備局
 秋田港湾事務所
http://www.pa.thr.mlit.go.jp/akita/index.html

□東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/
□読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/

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