西松建設株式会社(以下、西松建設)は山岳トンネル施工の装薬作業において、「遠隔装薬装置」に自動で爆薬を供給するシステムを開発(写真-1)。これにより、従来は装薬孔ごとに作業員が手作業で行っていた爆薬供給の一連の工程が自動化され、西松建設が目指す山岳トンネル施工の完全無人化・完全自動化に向けて、大きく前進したというリリースニュースをお送りします。
山岳トンネル施工の装薬作業自動化を実現

写真-1 遠隔装薬装置向け自動爆薬供給システム 全景
開発の背景
西松建設ではかねてより、山岳トンネル施工のオートメーション化を目指し、重機の遠隔施工や自動運転を中心とした無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」の開発を進めています。
この取り組みの一環として、肌落ち災害の危険のある切羽近くで複数の作業員が⻑時間行う必要のある装薬作業に着目し、作業員が切羽天端から45 度範囲内※1 に立ち入ることなく爆薬を装填できる遠隔装薬装置を開発しました※2。
北海道新幹線、渡島トンネル(台場山)工事における現場実証では、切羽を無人化した状態で装薬作業が実施可能であることを確認しています※3。
しかし、従来の遠隔装薬装置では、装薬孔1孔ごとに作業員が手作業で爆薬を供給する必要があり、装薬作業の完全自動化に向けた課題となっていました。そこで西松建設は、ロボットアームにより遠隔装薬装置に爆薬を自動供給するシステムを開発しました。
システムの概要
本システムは、親ダイを把持して遠隔装薬装置に装填するロボットアーム(写真-2)、増しダイとなる粒状爆薬を圧送する粒状爆薬供給装置、ならびに遠隔操作で装薬孔へ挿入する遠隔装薬装置で構成されます。装薬手順は以下の通りです。
1 ロボットアームによる
親ダイの装填ロボットアームが親ダイを1 本ずつ把持し(写真-3)、遠隔装薬装置の装填パイプ先端へ自動で供給します(写真-4)
2 遠隔装薬装置の装薬孔への挿入
操作者は切羽から離れた操作席で映像モニターを確認しながら遠隔装薬装置を操作し、装填パイプを装薬孔へ挿入します(写真-5、写真-6)。
3 装薬孔への装填
エア圧送にて親ダイを装薬孔内に装填した後、粒状爆薬供給装置(写真-7)から増しダイとなる粒状爆薬を圧送して装薬孔内に充填します(写真-8)。

写真-2 ロボットアーム 多関節ロボット「MOTOMAN(モートマン)」

写真-3 ロボットアームによる親ダイの把持

写真-4 遠隔装薬装置への親ダイの供給

写真-5 遠隔操作状況

写真-6 装薬孔への挿入状況

写真-7 粒状爆薬供給装置

写真-8 装薬完了状況
実験施設にて実証試験を実施
本システムを遠隔操作ロボットに搭載し、仮想切羽を模した花崗岩試験体に設けた装薬孔を対象として実証試験を行いました。その結果、ロボットアームによる親ダイの供給から装薬孔への挿入、爆薬の装填までの一連の作業が、作業員による切羽近傍での立会いを伴わずに自動で実施できることを確認しました。
今後の展開
今後は、本システムを当社施工中のトンネル建設現場で実証するとともに、装薬作業のさらなる自動化技術の開発を進め、トンネル工事の課題である肌落ち災害防止・労働力不足への対策を図るとともに、安全性および生産性の向上に引き続き取り組んでまいります。
また、Tunnel RemOS については、各技術の実証実験を2027 年度までに完了する計画であり、本技術もその構成技術に位置付けています。これらの技術を用いて、トンネル掘削作業の完全無人化・自動化の早期実現を目指し取り組みを続けてまいります。
※1厚生労働省「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に関わるガイドライン」
第6 事業者が講ずべき措置より
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001233649.pdf
※2山岳トンネルの切羽無人化に向けた遠隔装薬装置を開発(2026 年9 月8 日ニュースリリース)
https://www.nishimatsu.co.jp/news/2026/post̲171.html
※3山岳トンネルの切羽無人化に向けた遠隔装薬装置の現場実証(2026 年9 月29 日ニュースリリース)
https://www.nishimatsu.co.jp/news/2026/post̲174.html
資料引用:西松建設
おわりに
今回の西松建設による「遠隔装薬装置向け自動爆薬供給システム」の開発は、山岳トンネル工事における「施工の完全無人化・自動化」という大きな目標に向けた、インパクトのある前進と感じます。
トンネル工事の最前線である「切羽(きりは)」は、常に肌落ちや崩落の危険と隣り合わせの過酷な環境です。
今回、ロボットアームを活用して親ダイの装填から増しダイの圧送までの一連の爆薬供給を自動化したことで、作業員が危険エリアに立ち入る必要はなくなりました。火薬類取扱保安責任者などの資格を持つオペレーターが、離れた場所から安全に遠隔操作できる環境が整ったことは、現場の安全衛生面において極めて大きな価値をもたらします。
また、システムを支えるハードウェアとして、高い耐久性と精度を誇る安川電機製の産業用ロボットアームが採用されている点も非常に興味深いポイントです。
過酷な粉塵や水気に耐えうる高い防塵・防水性能(IP規格)や、外部センサー・重機とのシステム統合のしやすさは、刻々と変化する建設現場と極めて高い相性を示しています。かつて工場内が主戦場だった産業用ロボットが、土木・建設DXの最前線で「人の命を守るパートナー」として活躍する時代が本格的に到来したことを実感させられます。
西松建設が目指す「Tunnel RemOS」の実証完了(2027年度予定)に向け、本技術はその中核を担うことになります。深刻化する建設業界の人手不足解消と、悲願である「切羽事故ゼロ」の達成に向け、現場実証を経て本システムが全国の工事現場へ社会実装されていく未来を、今後も大いに期待して見守りたいと思います。
【リリースニュース配信元】
□西松建設株式会社
リリースニュース:
https://www.nishimatsu.co.jp/news/2026/post_177.html