川田グループの基幹事業会社である川田工業株式会社(以下、川田工業)は、鋼構造製品の塗装品質向上と検査工程の自動化を目的に、本年9月に「塗膜厚自動検査ロボット」の試験運転を富山工場で開始、2026年からの本格稼働を発表したというリリースニュースをお届けします。
塗膜厚自動検査ロボット
高精度な塗膜厚検査と統計的品質管理の自動化で塗装品質をさらに向上

塗膜厚自動検査ロボット
開発の背景
建設業界では、労働者の高齢化、担い手不足、労働時間の上限規制、猛暑や集中豪雨といった気候変動による屋外作業環境の悪化など多数の課題を抱え、これまでの労働集約的な作業にロボティクス技術を取り入れたDXが急務となっています。
かねてよりロボティクス技術を現場活用するための研究開発を続けてきた川田工業は、そこで培った要素技術を融合させ、今回、塗膜厚自動検査ロボットの開発に至りました。
開発の経緯と概要開発の経緯と概要
2024年、熟練工が持つ塗装技術を継承し、塗装品質をより高めていくため、川田工業は富山工場に「ロボット自動塗装ライン」とその実験棟を構築しました。
今回の塗膜厚自動検査ロボット(以下、本ロボット)は、「ロボット自動塗装ライン」と並行した開発の一環として、塗装後の塗膜厚検査を自動化するものです。
本ロボットを構成する移動体には川田工業社が開発した「EGmobile(商標登録申請中)」が活用されています。
EGmobileは、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて工場内の環境をマッピングし、自己位置をリアルタイムで推定しながら自律走行を行います。これにより、所定の測定ポイントに正確に到達し、塗膜厚の自動検査を実現しています。
また、EGmobileに搭載している6軸アームロボットのエンドエフェクタとなるデジタル膜厚計は、川田工業社製品の「ぬり助」と共通であり、取得した測定データはクラウドに保存のうえ、自動的に帳票が作成される仕組みとなっております。
本ロボットの特長
● EGmobileはガイドレスで走行でき、人や障害物を自動的に回避しながら移動可能
● 測定ポイントの位置決め精度が±10mm以内で塗り重ね時の計測精度が高い
● 測定経路・測定開始時間をセットしておくことで予約測定が可能
● 測定ポイントが斜めであっても距離センサと力センサを用いて正確に測定
● 塗膜厚管理システム「ぬり助」と連動し測定データをクラウド上に保存、結果判定と帳票作成を自動化
● 防塵防滴機能装備
● 障害物センサによる安全装置装備

塗膜厚自動検査ロボット

エンドエフェクタ
期待される導入効果
塗膜厚検査を自動化することで、塗膜厚の分布や塗りムラの傾向を精緻にデータ化でき、塗装品質の向上に加えて、塗装工の技能向上、自動塗装ロボットとの連携や塗装ロスの削減が期待できます。
人とロボットの共存・協働により品質向上と雇用創出の両立を図り、継続的な開発を進めていきます。
参考情報
● ロボット自動塗装ライン
川田工業 富山工場に実験棟を構築し、自走式の防爆型6軸塗装ロボットと自動搬送装置で、ロボット自動塗装ラインを運用。DXを通じた生産性向上と新たな職域創出、建設業界の課題解決を目指しています。
● 鋼・コンクリート合成床版「SCデッキ」
橋梁の床構造の一部で鋼板または形鋼とコンクリートが一体となって荷重に抵抗するように構成された床版。(製作・販売:川田工業株式会社)
資料引用:川田工業
おわりに
川田工業が開発した塗膜厚自動検査ロボットは、単なる品質管理の自動化に留まらない、汎用性の高いインテリジェント・プラットフォームです。
このロボットの核となる技術――SLAMによる自律移動、6軸アームによる高精度なセンシング/作業、クラウド連携によるデータ管理――を組み合わせることで、
以下のような分野への転用活用も可能ではと考えられます。
インフラ非破壊検査(NDT):橋梁やプラントの広大な構造物を、センサー交換により、ひび割れや腐食を自動で高精度にモニタリング
危険環境の遠隔監視:有害物質や放射線エリアで、センサーを搭載したロボットが安全・定期的な巡回とデータ収集を代行
精密組立・仕上げ加工:大型部品の製造ラインにおいて、微細なトルク管理や接着作業など、熟練の技能を模倣した精密作業を自動化
この技術は、建設業界の課題解決に留まらず、「ロボティクス×センシング」の力を必要とする
あらゆる製造・保守分野において、品質向上、安全性確保、そして生産性革新を実現する大きな可能性を秘めています。
〔本件リリースに関するお問い合わせ先〕
□川田テクノロジーズ株式会社
リリースニュース:https://www.kawada.co.jp/topics/topics_251015_paintinspection.html
広報室(川田工業株式会社 広報担当)
email:koho@kawada.co.jp
川田テクノロジーズ株式会社(東証プライム:3443、東京本社:東京都北区、代表取締役社長:川田忠裕)を持株会社とする、川田グループの基幹事業会社