株式会社建設技術研究所(以下、建設技術研究所)、株式会社大林組(以下、大林組)、八千代エンジニヤリング株式会社(以下、八千代エンジニヤリング)、Terra Drone株式会社(以下、Terra Drone)の4社は共同開発により、設計条件や施工条件に基づいて設定したパラメータ(※1)の入力によりBIM/CIM配筋モデル(※2)を自動生成するツール(以下「本ツール」)に、2次元図面を同時に自動生成・修正する機能を実装。本ツールは構造物の設計における3次元モデルと2次元図面の連動を実現し、生産性の向上および品質の確保に貢献したというリリースニュースをおとどけします。
3次元配筋モデルと2次元図面の同時生成で生産性向上

土木事業では、生産性の向上を目的として、3次元モデルとなるBIM/CIMモデルの活用が進んでいますが、現状では発注者へ納品する2次元図面を作成した後に、BIM/CIMモデルを作成し、さらに2次元図面との整合を照査する必要があります。
複雑な配筋モデルの構築には多大な時間を要することに加え、2次元図面とBIM/CIMモデル間の齟齬(そご)による手戻り作業が生じ、返って生産性を低下させる要因の一つとなっていました。
そのため、4社はBIM/CIM配筋モデルと2次元図面を同時生成する開発に着手しており、今般、その機能実装を実現しました。
また、国土交通省は将来的に3次元モデルを契約図書とすることや、3次元モデルと2次元図面が互いに連動する場合は両者の整合確認を不要とする方針(※3)を示しており、本ツールはこの連動を配筋情報まで具現化したツールになります。
※1 パラメータ(parameters):ソフトウェアやシステムの挙動に影響を与える、外部から投入されるデータでボックスのモデル・図面を作成する上で必要な諸元
※2 BIM/CIM配筋モデル 3次元CADで作成した配筋モデルに鉄筋に関する属性情報が付与されているもの
※3 国土交通省 第14回BIM/CIM推進委員会(令和7年6月17日) 資料1 BIM/CIMの進め方について
今回実装した本ツールの特長は以下のとおりです。
BIM/CIM配筋モデルと2次元配筋図の同時生成および連動
パラメータ入力によりBIM/CIM配筋モデルと2次元配筋図を同時に自動生成し、作成の手間と両者間の齟齬(そご)をなくすことで、設計品質を確保し、生産性を向上できます。
また、両者を連動させることで、条件変更があった場合でも修正内容を相互に即時反映でき、生産性を向上させ設計・施工段階でのミスや手戻りを防止します。

図2 ツールの操作画面イメージ
鉄筋数量表、鉄筋加工図の自動生成
自動生成したBIM/CIM配筋モデルから鉄筋数量表と鉄筋加工図を自動で作成し、2次元配筋図作成に必要な作業の大幅な削減が可能です。
2連ボックスカルバートとU型擁壁にも対応
本ツールはこれまで、単ボックスカルバートに対応してきましたが、新たに車線数が多い場合に用いられる2連ボックスカルバートとアンダーパスとのアプローチ部などで用いられるU型擁壁にも対応しました。対応できる躯体形状が増えたことで、ツールを活用できる機会がさらに拡大しました。
今回実装した機能によって、従来は約115時間かかっていた作業が本ツールを使用すると約10時間で実施でき、1/10の省力化を実現できます。今後は、2次元配筋図の図面としての体裁を整える機能や、グラフィカルで判り易い入力システムの開発を進める予定です。

図3 本ツールによる新規モデル・図面作成時の省力化
4社は、設計・施工段階のみならず、積算、維持管理に必要となる機能を実装することにより、各建設プロセスに亘って一元的に管理・連携するBIM/CIMの取り組みを推進します。また、顧客満足度のさらなる向上と建設業界の生産性の向上および品質の確保に寄与し、インフラ分野のDXを推進していきます。
資料引用:テラドローン
おわりに
今回のリリースで発表された、「パラメータ駆動による3次元BIM/CIM配筋モデルと2次元図面の同時自動生成・連動」という技術は、ボックスカルバートの設計作業を1/10に短縮するという、驚くべき成果を実現しました。これは、従来のプロセスに内在していた「3Dと2Dの整合確認」という最大の手戻り要因を根本的に解消し、設計品質の確保と生産性の向上を両立させる画期的なイノベーションです。
この核となる技術は、非常に汎用性が高く、今後、以下のような広範な転用が期待されるのではないでしょうか。
まず、土木構造物への水平展開として、橋梁下部工(橋台・橋脚)や各種擁壁工など、複雑な配筋を持つ他のRC構造物への適用は必然です。さらに、技術的な応用範囲は建設分野全体に及び、建築物のRC造躯体や、配管・ダクトといった設備分野(MEP)のルーティング設計における3Dモデルと系統図の連動にも転用されるでしょう。
また、本技術で生成された「属性情報を持つパラメータ」は、設計・施工を超えた価値を生み出します。正確な積算・発注業務の効率化に貢献するだけでなく、インフラの完成後も、そのパラメータ情報がデジタルツインの基盤として活用され、維持管理や補修計画を高度化します。
この技術は、日本のインフラ分野における設計から維持管理までのライフサイクル全体を一元的に管理・連携する、まさしく建設DXの未来を拓くキーテクノロジーに昇華できれば、今後の対応構造物の拡大と、建設プロセス全般への適用に、大いに期待していきたいと思います。
【お問い合わせ先】
□株式会社建設技術研究所
リリースニュース
https://www.ctie.co.jp/news/tech/2025/20251114_1607.html
□株式会社大林組
リリースニュース
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20251114_1.html
□八千代エンジニヤリング株式会社
リリースニュース
https://www.yachiyo-eng.co.jp/news/2025/11/post_962.html
□Terra Drone株式会社
リリースニュース
https://terra-drone.net/24333
テラドローンは、「Unlock “X” Dimensions(異なる次元を融合し、豊かな未来を創造する)」というミッションを掲げ、ドローンの開発及びソリューションを提供しています。また安全かつ効率的なドローンの運航を支援するための運航管理システム(UTM)の開発・提供や、国外を対象にした空飛ぶクルマ向け運航管理システムの開発にも注力し、幅広い産業に貢献しています。
テラドローンは、測量、点検、農業、運航管理の分野で累計3000件以上の実績を誇っています。また、当社グループを通じて提供されるUTMは、世界10カ国での導入実績があります。こうした成果により、Drone Industry Insightsが発表する『ドローンサービス企業 世界ランキング』で、産業用ドローンサービス企業として2019年以降連続でトップ2にランクインし、2024年は世界1位を獲得しました。さらに、経済産業省主催「日本スタートアップ大賞2025」では、国土交通分野の社会課題に向けた取り組みが高く評価され、「国土交通大臣賞」を受賞しました。
テラドローンは、ドローンや空飛ぶクルマの普及を見据え、“低空域経済圏のグローバルプラットフォーマー”として社会課題の解決を目指します。