熊谷組 アーティキュレートダンプトラックの複雑な関節挙動をシミュレートする「建機自動化検証プラットフォーム」を開発。

sugitec

株式会社熊谷組(以下、熊谷組)は、アーティキュレートダンプトラックの自動運転・遠隔操作システムを、実機を使わずにデスク上のPCのシミュレーション環境だけで検証できる「建機自動化検証プラットフォーム(ADTシミュレータ)」を開発というリリースニュースをおとどけします。

建機自動化検証プラットフォーム

実際の建設機械(建機)の動作ログ(実測データ)から一般化した挙動予測モデル等を用いて、建機特有の複雑な中折れ関節挙動やGNSS位置情報を高度に擬似生成し、PC内で自動走行制御ロジックの検証を完結させ、開発スピードの大幅な向上を図ることができます。
今後、当技術を活用して建設現場の省人化や施工DXの強力な推進を目指します。

開発背景

建設業界では、深刻な人手不足への対応や「2024年問題」※1に伴う省人化・省力化に向けて、建機の自動運転や遠隔操作(i-Construction・建設DX)の導入が進められています。

特に土砂運搬等で活躍するアーティキュレートダンプトラックは、車体の中央関節を折り曲げて旋回する構造上、一般的な車両と比べて走行軌跡や車体姿勢の制御ロジックが極めて複雑です。
そのため、わずかなパラメータ調整であっても、速度や進入角度などの条件を変えた膨大なパターンの繰り返し検証が不可欠となり、これらをすべて現場での実機テストに依存せざるを得ないことが、開発負荷の増大と開発スピード低下の大きな要因となっていました。

熊谷組は、こうしたアーティキュレートダンプトラック特有の物理挙動や通信データをソフトウェア上で高精度にシミュレートする環境を構築いたしました。
国土交通省が推進する自動施工の普及・標準化に向けた取り組みに対応し、施工計画上の運用シミュレーションにとどまらず、自動運転システムの制御・通信レベルでの高精度な検証を可能としました。
これにより、デスク上で実機さながらの検証を完結させ、開発サイクルを大幅に加速させる検証プラットフォームを実現いたしました。

概要

今回開発した「建機自動化検証プラットフォーム(ADTシミュレータ)」は、実際の建機を稼働させることなく、アーティキュレートダンプ特有の車体中央が折れ曲がる複雑な関節挙動や、操作信号、ならびにGNSS(Global Navigation Satellite System)位置情報をPC上で高度にシミュレート(擬似生成)するシステムです。

特に、実際の建機の動作ログ(実測データ)分析から導き出した挙動予測モデルを一般化して搭載しており、操舵や速度に応じた車体の屈折姿勢を高精度にシミュレートします。
これにより、接続された自動運転プログラム側に「本物の建機が現場を走っている」と認識させ、実機を1台も動かすことなく、デスク上のPC内で高度な自動走行制御ロジックや安全機能のデバッグ・検証を完結できます。

図1 シミュレータ画面

特長

動作ログに基づく「挙動予測モデル」による高精度な一般化
実際の建機の動作ログ(実測値)をもとに車体の物理挙動や応答特性を独自に一般化(モデル化)し、予測アルゴリズムとして搭載しています。
操舵入力や速度変更に対して「建機がどのように屈折・追従するか」を緻密に計算します。

GNSS位置情報の完全擬似出力
一般化された予測モデルから算出される車体の位置情報に基づき、実際のGNSS受信機が出力する標準フォーマット(NMEAデータ)を本シミュレータ内で生成・送信します。

走行データの可視化と高度な検証機能
走行ルートや車体の屈折姿勢、脱線距離などを画面上で直感的に確認できる機能に加え、プログラムによる自動テストや大量データ解析にも対応しています。

複数台の建機による「協調運行」シミュレーション
1台のPC上で最大5台までの仮想車両データ・通信ポートを独立管理可能です。
将来的なスマート工事現場で見込まれる「複数台の自動運転建機がすれ違う・協調して作業する」複雑な運用ロジックの検証基盤としても活用可能です。

図2 協調運行シミュレーション

効果

現地実機テスト依存からの脱却と開発サイクルの加速
実機の手配や広大な検証用フィールドの確保を伴う「現場テスト依存」を解消し、デスク上のみで自動運転プログラムの試走・デバッグ・検証を完結できます。
従来は制御プログラムの修正から現場での再検証完了まで約1ヶ月掛かっていた開発サイクルを1週間へと短縮します。

開発コストの削減と試走リスクの低減
数千万円~数億円規模の建機の稼働や燃料消費、試走に伴う現場での事故リスクを解消し、コスト削減と安全性・環境性の向上(CO2排出削減)に寄与します。

天候や環境に左右されない高効率な検証の実現
PC上で全自動テストを実行できるため、実機テストのような屋外のGNSS受信環境や天候に左右されることなく、24時間いつでも安定した検証が可能です。

図3 システム構成

今後の展望

熊谷組は本シミュレータを通じて、アーティキュレートダンプトラックの自動走行技術の高度化を図ってまいります。
今後は対応車種のラインナップ拡充を進めるとともに、AIを活用した自律走行・障害物回避アルゴリズムとの連携強化を推進します。
さらに、複数台の建機が協調して稼働する施工プロセスの完全デジタル検証基盤としての機能を拡張し、建設現場のさらなる省人化と施工DXの実現に貢献してまいります。

※1 2024年問題:国土交通白書 2025(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r06/hakusho/r07/html/n1111000.html)

資料引用:熊谷組

おわりに

今回の熊谷組のニュースを掘り下げてみて一番の発見だったのは、「建機の自動運転は、私たちが普段目にする乗用車の自動運転とはまったく異次元の難しさがある」ということでした。

一般的な車の自動運転は、カメラやセンサーで「周囲の障害物をどう認識して避けるか」という認知と判断が主な課題です。
しかし、アーティキュレートダンプトラックの場合は違います。
車体中央が折れ曲がる構造ゆえに、「ハンドルを切ってもすぐには曲がらないタイムラグ」「泥道で重い荷台に押されて車体がくの字に折れ曲がる恐怖」「油圧シリンダー独特の反応の鈍さ」など、泥臭く不確定な物理現象そのものを制御しなければなりませんでした。

これまで自動化が進まなかった本当の理由は、AIの頭脳不足ではなく、「現場の過酷な物理挙動を、数式で再現すること自体がほぼ不可能だったから」なのです。

だからこそ、今回の「完全実機レス検証」というニュースの本質は、単に「デスクワークでテストが楽になった」ということではありません。
実際の走行データから泥臭く物理パターンを解析し、PCの中に「現実そのままの泥と関節の挙動」を再現させたこと。
それにより、事故リスクも燃料代も気にせず、AIが仮想空間で何百万回も「物理の壁」と戦える環境を作ったこと――これこそが最大の技術的突破であると言えます。

「開発期間が1ヶ月から1週間に短縮」というニュースの数字の裏には、目に見えない複雑な物理の壁を越えた技術者たちの知恵が詰まっています。
次に工事現場で泥まみれになりながら動く重機を見かけたときは、その無骨な車体の中で繰り広げられている緻密な物理とAIの格闘に誇らしさを感じることでしょう。


【リリースニュース配信元】
□株式会社熊谷組

リリースニュース
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2026/pr-20260901-004351.html
経営戦略本部広報部
電話:03-3235-8155

技術に関するお問い合わせ先
株式会社熊谷組 土木事業本部土木技術統括部土木DX推進部
https://www.kumagaigumi.co.jp/contact/tech-solution/

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