鹿島建設
超高層建物全体の揺れを大幅に低減する「KaCLASS®」を初導入。

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概要

鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)が、巨大地震に伴い発生する長周期地震動による超高層建物全体の揺れを、従来の耐震・制震架構と比べ大幅に低減する制御層制震構造「KaCLASS®」※1を開発というリリースニュースをお届けします。

より安全・安心で、自由度の高い開放的な居室空間を実現

制御層制震構造「KaCLASS」の構造原理

KaCLASSは、同調質量ダンパ(Tuned Mass Damper)※2の原理を応用した制免震技術です。
建物高さの70%程度の位置に設けた制御層※3が地震時に変形することで、制御層から上の躯体には免震効果を、下の躯体にはTMD制震効果を与え、建物全体に大きな制御効果を付与します。
また、制御層が地震エネルギーを大きく吸収し、建物全体の揺れを大幅に低減できるため、巨大地震による長周期地震動に対しても、従来の耐震・制震架構と比較して少ない柱梁で高い安全性を確保でき、開放的な空間が実現可能です。
このたび、KaCLASSを、阪急阪神不動産株式会社(代表取締役社長:諸冨隆一、本社:大阪市北区)が事業を進める超高層タワーレジデンス「ジオタワー大阪十三」(大阪市淀川区)に初導入しました。
高耐力・高靭性を備えた既開発の超高層鉄筋コンクリート造技術「HiRC®工法」に、このKaCLASSを搭載することで、開放的な居室空間を提供しながら、より高い安全性を確保した建物を実現します。

※1 Kajima Control Layer Advanced Structural System(特許出願済)
※2 TMD:建物に設置した錘の揺れによって、地震時の建物振動を制御する制震装置
※3 免震支承、減衰装置、他で構成される地震エネルギー吸収層

開発の背景

持続可能な社会の実現や、BCP(事業継続計画)および LCP(生活継続計画)の実施において、建物の長寿命化は不可欠です。
それと同時に、超高層建物には、近い将来の発生が危惧される巨大地震により生じる長周期地震動に対応可能な高い耐震性能も求められています。

建物の耐震性能を高めるには制震装置の設置が有効ですが、各階に設置する従来の制震装置では、建築計画上設置できる台数に限りがあります。
そこで、制御機構を制御層に集約して配置し、地震エネルギー吸収性能を格段に高める新たな制免震工法の開発に着手しました。

KaCLASSの技術概要と特長

KaCLASSは、建物を高さの70%程度の位置で上部躯体と下部躯体に分割し、その間に制御層と呼ばれるエネルギー吸収層を構築します。

制御層は、地震時に大きく変形するため、十分なエネルギー吸収能力を有しており、制御層から上部躯体には免震効果を、下部躯体には上部躯体をマス(錘)としたTMD制震効果を与えます。

鹿島建設は、1970年代から、高い耐力と粘り強さを兼ね備えた超高層鉄筋コンクリート造技術「HiRC工法」の研究開発を継続しており、実物件への導入を進め、高い信頼と豊富な実績を蓄積してきました。

今回、このHiRC工法にKaCLASSを搭載することで、より高い安全性を確保した超高層建物を実現しました。

1. 巨大地震による長周期地震動への対応
巨大地震により発生する長周期地震動に対し、従来の耐震・制震架構で構造の安全性を確保するためには居室空間に多くの柱梁が必要となります。
一方、KaCLASSを導入した場合、制御層が地震エネルギーを大きく吸収し、建物全体の揺れを大幅に低減できるため、居室空間から柱梁を削減し、自由度の高い居室空間を実現することができます。

KaCLASS導入により、柱梁の少ない自由度の高い空間を実現

2. 地震時に感じる揺れの低減
超高層建物にKaCLASSを導入することで、従来の耐震架構と比べ、巨大地震発生時に居住者が感じる揺れ(加速度)を大幅に低減することができます。地震時における居住者の不安感をできる限り和らげ、安全・安心でより快適な住環境を提供します。

KaCLASSによる揺れの制御効果
(本建物の巨大地震による長周期地震動に対する最上階の応答加速度を従来の耐震架構と比較)

3. 鹿島式フェイルセーフ機構の搭載
フェイルセーフ機構として、制御層には新開発の摩擦バッファ※4を設けています。
この装置は、設計想定を超える大きさの地震動を受けた際の緩衝装置であり、衝撃を和らげながら制御層を所定の変形(躯体クリアランス)以内に抑えることができます。
※4 装置内部の摩擦機構を利用して制御層の過大な変形を抑制する装置(特許出願済)

摩擦バッファの外観

4. 風揺れに対する高い安全性と居住性能の確保
台風などの強風に対して制御層は殆ど変形しないため、重厚な鉄筋コンクリート造の特長である高い居住性能を損なうことはありません。

今後の展開

今後、鹿島建設は、建物の高い耐震安全性だけでなく、居住性や事業継続性を重視した安心性能が求められる超高層建物を中心にKaCLASSを広く展開し、安全・安心でサステナブルな建物を提供していきます。

工事概要

工事名称  : (仮称)大阪市淀川区十三東計画
工事場所  : 大阪府大阪市淀川区十三東一丁目21番3他(地番)
発注者  : 阪急阪神不動産株式会社
設計者  : (意匠-住宅部分・設備)鹿島建設株式会社 一級建築士事務所
   (意匠-低層施設部分) 株式会社類設計室
   (構造)        鹿島建設株式会社 一級建築士事務所
施工者  : 鹿島・髙松共同企業体
建物用途  : 共同住宅、物販店舗、図書館、保育所
構造  : 鉄筋コンクリート造、一部 鉄骨造 地上39階・駐輪場棟一部地下1階
工期  : 2022年8月~2026年1月(予定)

資料引用:鹿島建設

おわりに

大阪市は、もと淀川区役所跡地等活用事業において、「十三地区のブランド向上」、「にぎわいづくりや交流促進」、「淀川区政推進への寄与」を開発方針とする民間事業者の公募型プロポーザルを実施し、2020年6月3日、阪急阪神不動産と高松建設のグループを開発事業者に決定、2020年10月29日に基本協定書を締結している。
全体計画では隣接を含めた3敷地の一団地型総合設計制度を活用し、ランドマークとなる地上39階建ての「ジオタワー大阪十三」、高さ約144mの複合施設棟、および地上9階建ての学校施設棟を建設し、周囲に約2,700㎡の公開空地を創出するとしている。まさにRe-Born OSAKAだ。

北には「生駒断層帯」がある「十三」周辺だが、地形的にも淀川の砂州で形成された台地に位置している。しかし、断層帯が未調査なのかもしれないが、確認されていない(「大阪のトリセツ」昭文社より)。地震には備えあれば患いなし。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202306/6a1-j.html

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