大成建設株式会社(以下、大成建設)は、半導体製造装置向け高性能機器免震装置の新型「TASSユニット」を改良し、最大震度6弱程度までの大地震時だけでなく、震度3~5弱程度の中小地震時にも免震性能を発揮するよう機能拡張を実現。これにより、様々な規模の地震への対応が可能となり、半導体製造装置の重要部品や製造途中の半導体製品が地震時に受ける被害を低減し、半導体製造における生産性の向上に貢献することが可能になったというリリースニュースをお届けします。
免震支承により中小地震から大地震まで幅広い対応が可能に
高性能機器免震装置「TASSユニット」は、震度5弱以上の大地震時に半導体製造装置の重要部品(石英部品)が損傷することを防ぐ目的で大成建設と株式会社エーエス(社長:森明広)が2009年に共同開発しました。
「TASSユニット」は車輪とレールが一体となった転がり支承をユニット化した免震装置(支承ユニット)で、水平2方向の免震構造により地震時の揺れを効果的に減衰することが可能です。(図1参照)

2022年には免震装置の共通ユニット化と設置架台の合理化を図った新型「TASSユニット」を開発してラインアップを拡充しており、国内および台湾において従来型・新型含め、これまでに4000台近くが採用され、継続的に納入実績を伸ばしています。
一方、半導体チップの回路をより細かく製造する「プロセスノードの微細化」が進む中、
発生頻度の高い中小地震により製造中の半導体製品(ウェーハ等)が破損するリスクへの対策が求められています。
そこで大成建設は、新型「TASSユニット」の転がり支承の車輪部分に摩擦抵抗を切り替える新たな技術を導入することで、中小地震から大地震まで様々な規模の地震への対応を可能とする大幅な改良を施し、この度、機能拡張した新型「TASSユニット」を製品化しました。
機能拡張した新型「TASSユニット」の特長は以下のとおりです。
地震規模に応じて摩擦抵抗を切り替え、様々な揺れを低減(図2、3参照)
新方式の転がり支承は、摩擦抵抗の異なる2種類の車輪とクランク形状のレール(切替型レール)を組み合わせた構造を採用しています。
大地震への対応を想定した従来の車輪(標準摩擦タイプ)に加え、それよりも摩擦抵抗の小さい車輪(低摩擦タイプ)を併用するとともに、新たに搭載した切替型レールの働きによって地震の揺れの大きさに応じて支承ユニットを使い分けることで、中小地震(小ストローク時)から大地震(大ストローク時)まで様々な規模の地震に対して高い免震性能を発揮します。


コストは従来型と同等、短期間での納入が可能(図4参照)
新技術の導入により機能拡張を図った新型「TASSユニット」は、従来型と同様の基本構造を踏襲しており、従来型と同等の導入コストを実現しています。
また、工場での半導体製造装置に対する免震装置の設計条件などの情報を事前に提示いただいた場合、
発注後、最短1か月で納品が可能です。
主に縦型炉等の半導体製造装置向け免震装置としての販売に加え、他の多種多様な半導体製造装置にも柔軟に対応することができます。

今後、大成建設は、機能拡張した新型「TASSユニット」をラインアップに加え、国内外の多種多様な半導体製造装置向けに様々な規模の地震に対応可能な高性能機器免震装置として幅広く普及展開してまいります。
資料引用:大成建設
おわりに
今回ご紹介した大成建設の新型「TASSユニット」は、単なる耐震・免震装置の改良に留まらない、ゲームチェンジャーとなり得る技術革新です。
その核心は、地震の規模に応じて摩擦抵抗を切り替える新機構にあります。
従来の免震が「大地震時の破壊防止」に主眼を置いていたのに対し、新型TASSユニットは、震度3程度の微細な揺れから精密機器の被害や生産性の低下を防ぐことに成功しました。
これは、発生頻度の高い中小地震による「見えない損失」を大幅に削減するということです。
この「高精度・適応型免震技術」が持つポテンシャルは、半導体製造の枠を超えて、様々な分野で応用されることが期待されます。
医療・研究分野: 高分解能電子顕微鏡や超精密レーザー装置など、わずかな振動が致命的なノイズとなる超精密研究機器の安定稼働を保証します。
超精密製造分野: 航空宇宙部品や光学レンズなどのナノ・ミクロン単位の加工装置の不良率を低減し、製品品質の安定化に貢献します。
重要インフラ: データセンターのサーバーラックなど、業務継続性(BCP)が最重要視される分野で、ラック単位での即応性の高い地震対策を提供します。
文化財保護: 貴重な美術品や文化財の展示台に組み込むことで、あらゆる規模の地震から替えの利かない資産を絶対的に守る基盤となります。
TASSユニットの技術は、地震国である日本の産業と研究活動のレジリエンス(回復力)を飛躍的に高める鍵となるでしょう。
今後の多分野への展開に、引き続き注目していきましょう。
【お問い合わせ先】
□大成建設株式会社
リリースニュース
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/251117_10769.html
□株式会社エーエス
https://www.a-sys.co.jp/