清水建設株式会社(以下、清水建設)が、建設現場における労働力不足の解消と、生産性・安全性の向上を目的にAIロボット(フィジカルAI)の現場実装に向けた取り組みを開始というリリースニュースをおとどけします。
国内建設業界の先陣を切ってAIロボットの実証を開始
既にヒューマノイドロボットによる現場巡回やロボットアームによる塗装作業の実用化をターゲットに、本格的な実証をスタートさせています。
フィジカルAIとは、カメラやセンサーなどによって現実世界の状況を把握してロボットや機械システムを適応的に制御するAI技術の総称です。
その代表格と言えるのが、現実世界の変化する環境に適応しながら、物理的な動作によってタスクを遂行する能力を持つAIロボットです。
労働力不足が懸念される建設業界にとって、AIロボットはまさに課題解消への切り札の1つと言えます。建設現場でこれまで活用されてきた従来型のロボットは、プログラムされた通りの動作しかできないため、作業ごとの専用機であることが多かったのに対し、AIロボットを実用化できれば、複数の作業をこなす汎用機とすることができるからです。
清水建設は、作業の進捗によって日々環境が変化する建設現場や、人手による作業が圧倒的に多い建設業の作業特性から、それらを効果的に代替できる可能性が高いヒューマノイドロボットに着目。
既に手にカメラを持った状態で自律歩行するヒューマノイドロボットによる現場巡回や、作業者の動作を模倣学習したロボットアームでの塗装作業を実証しています。
清水建設が施工を進める「Torch Tower(トーチタワー)」の建設現場で実施した巡回作業の実証でも、手にカメラを持ったヒューマノイドが1.0m/sの速度で自律的に歩行。
現実世界である現場の状況を感知・判断しながら、あらかじめ指定した道順で巡回しました。
カメラで撮影・取得した映像を、マルチモーダルLLM(大規模言語モデル)を駆使したAI技術によって解析することで、管理業務(現場巡回)の効率化につなげていくことも検討しています。
ヒューマノイドロボットに代表されるAIロボットの開発や現場実装など、建設現場でのフィジカルAIの実用化に必要となるのが、建設現場におけるデータ収集・分析やシミュレーション、AI学習モデルの構築、ロボットへの実装(実証試験)のサイクルを着実に回す、いわば建設業に特化したAIエコシステムの構築です。
エコシステムの構築の過程で進められるAIロボットへの移植を目的とする技能のモデル化・アーカイブ化は、熟練技能者の高齢化が進む中で、日本の建設業が持つ高度な技能の伝承にもつながるものと期待されています。
清水建設は今後、建設業に特化したAIエコシステムをつくり上げることで、建設作業におけるロボット化の適用範囲を広げていく考えです。
将来的な労働力不足への懸念という建設業界における共通課題の解決に向けて、ソニー(株)など複数の企業の技術協力を得ながら、建設業界の先陣を切って、AIロボットの実用化を進めていく方針です。

現場内を巡回するヒューマノイドロボット

ロボットアームによる塗装作業
資料引用:清水建設
おわりに
清水建設の最新リリースは、国内建設業界における「AIロボット(フィジカルAI)」活用の大きな転換点を示しています。
同社は「Torch Tower」の現場でヒューマノイドによる自律巡回や、熟練技を模倣学習したロボットアームでの塗装実証を本格化させました。
ここで見逃せないのは、海外製の高度なハードウェアを共通プラットフォームとして受け入れつつ、自社の現場データや熟練技能を融合させた「建設バーティカルAI」の構築を真の目的に据えている点です。この動きは、大手に限られた先進的な試みのように見えるかもしれません。
しかし、人手不足と技能伝承という課題に直面する中小の建設・調査企業にとっても、決して他人事ではない大きな波の始まりを意味しています。
対して中小企業がこれから自社ならではのバーティカルAIを構築していくための鍵は、「ニッチな現場データの蓄積」と「課題の徹底的な特化」にあります。
自社で一から巨大なAIやロボットを開発する必要はありません。まずは日々の施工写真や点検データ、職人の知見をデジタル化して蓄積すること。そして「ひび割れ判定」や「帳票の自動生成」といった特定の現場作業にフォーカスし、既存の基盤AIやスタートアップの技術を組み合わせていくことが現実的かつ最強のアプローチとなります。
大手がAIエコシステムやハードウェアの実装基盤を整えていくこれからの時代、中小企業の現場に眠る「深くて濃い専門ノウハウ」は、AI時代において最も価値のある資源となります。
まずは、明日からの現場で「AIに学習させやすい形でデータを残す」という小さな一歩を踏み出すこと。それこそが、将来の自社専用AIを育て上げ、過酷な業界環境を勝ち抜くための確かな道筋となるはずです。
【リリースニュース配信元】
□清水建設株式会社
リリースニュース
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2026/2026027.html