奥村組✕NTTドコモソリューションズ 画像認識AIを活用しコンクリート発注数量を自動算出。

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NTTドコモソリューションズ株式会社 (以下、NTTドコモソリューションズ) と株式会社奥村組(以下、奥村組)は、コンクリート打設工事におけるコンクリート発注数量を自動で算出する独自のAIモデル (以下、本AIモデル) を構築というリリースニュースをおとどけします。

建設現場の生産性向上および残コンクリート・戻りコンクリートの低減へ

このたび、その中核である画像認識AIが、特定の条件下において未打設範囲を97.5%以上の精度で確認でき、実用に足る高い判定精度を有することを技術検証にて確認しました。

図1 評価に使用した実際の未打設領域画像と画像認識AIによる判定結果

建設現場におけるコンクリート発注数量の算出は、未打設領域を人の手で実測して算出する方法が一般的ですが、手間がかかる上に人による計測精度のばらつきや計算ミスなどが原因で発注量に誤差が生じるケースもあります。

建設業界では、2024年4月から時間外労働の罰則付き上限規制が適用されたこともあり、生産性向上の推進が必須となっています。
また、コンクリート打設時の余剰である残コンクリート・戻りコンクリートがコストと環境負荷を増大させる深刻な課題となっています。

このような状況を受け、これまで画像認識AIを用いて鉄筋のガス圧接継手外観検査サービス※1を展開するなど、建設現場のDXを支援してきたNTTドコモソリューションズが持つ技術力と、全国各地で土木・建築事業を展開する奥村組が持つコンクリート打設に関するノウハウを掛け合わせ、本AIモデルを構築しました。
本AIモデルの特長は、画像認識AIが、コンクリートの未打設領域をリアルタイムかつ高精度に判定する点にあります。

これにより、コンクリートの未打設領域の実測が不要となるため、作業工数の低減が期待できます。
さらに、未打設領域の判定結果をもとに必要なコンクリート数量を自動算出することで、過不足のない発注が期待できます。
現場の生産性向上はもちろん、残コンクリート・戻りコンクリートの発生を最小限に抑えることによる資材・廃棄コストの低減効果も見込めます。

※1 NTTドコモソリューションズの提供する「ゼネコンコラボ®」のAI検査機能として提供。「ゼネコンコラボ」 は、NTTドコモソリューションズ株式会社の登録商標です。

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技術検証について

今回の技術検証では、画像認識AIがコンクリートの未打設領域を高精度に自動判定できることを確認しました。

●時期
2024年12月~2025年5月
●技術検証の目的 
独自に構築した画像認識AIによるコンクリート未打設領域の判定精度の評価
●対象業務と課題
建設現場のコンクリート打設業務における生産性向上および、残コンクリート・戻りコンクリートにより発生するコストや環境負荷の低減
●技術検証内容
物流倉庫やマンション等の建築現場におけるコンクリート打設場所に設置したカメラから定期的に取得した画像をもとに、事前に設定された計測範囲内の未打設領域を自動で判定
●本AIモデルの構成要素
① 複数のコンクリート打設現場で撮影した画像におけるコンクリート未打設領域を、セマンティック・セグメンテーションを用いて学習させた画像認識AI(NTTドコモソリューションズが開発)
② 上記画像認識AIを活用し、近距離撮影により発生する画像のゆがみを補正する技術を組み合わせて高精度な判定を実現した、独自のAIモデル※2 
※2 本技術はNTTドコモソリューションズと奥村組にて特許共同出願中

●技術検証結果
① 縦20m×横10m×厚さ0.2m(メートル)の範囲と想定した場合に、コンクリート未打設領域を97.5%以上の精度で認識することを確認
② 画像認識AIによる判定結果が、コンクリート発注数量の自動算出について実用化が可能となる高水準の精度であることを確認
③ 判定画像に機材や人物が映り込んでいる場合でも、映り込んでいない場合と同程度の精度で判定できることを確認

図2 現場撮影から本AIモデルの処理結果出力までの流れ

図3 機材や人物が映り込んでいる画像における実際の未打設領域と画像認識AIによる判定結果

■各社の役割

(1)コンクリート未打設範囲の判定フローの検討: NTTドコモソリューションズ、奥村組
(2)映像データの提供:奥村組
(3)AIモデル構築・精度検証:NTTドコモソリューションズ
(4)撮像の透視投影変換とゆがみ補正ロジックの構築:NTTドコモソリューションズ
(5)課題抽出&対応策の検討: NTTドコモソリューションズ、奥村組

次のステップとして、 NTTドコモソリューションズと奥村組は、コンクリート発注数量を自動算出するサービスの実現にむけた建設現場での運用実証を開始します。
この運用実証では、本AIモデルによる発注数量の算出精度や、現場作業の工数低減効果などの実用性を確かめます。
現場の利用者からのフィードバックを収集・提供することで、本AIモデルの有効性を確認しながら、現場のニーズに即したサービスの実現をめざします。

本AIモデルを活用したサービスは、NTTドコモソリューションズのゼネコンコラボ®のラインアップとして、2025年度内の提供開始をめざします。
両社は引き続き連携し、建設業界のDX推進と新たな価値創出に取り組みます。

資料引用:奥村組/NTTドコモソリューションズ

おわりに

建設現場で避けて通れない残コンクリート・戻りコンクリートの問題。その根源は、「足りない」リスクを避けるための過剰発注という、安全を優先するがゆえの構造的な課題にあります。

しかし、この余剰分は単なる廃棄物ではありません。

製造過程で大量のCO2を排出するコンクリートを無駄にすることは、環境負荷と経済的コストの増大に直結しています。
処理場所の逼迫、処理費用の高騰、そして何よりも脱炭素社会実現への道のりにおいて、残コン・戻りコンは解決が待ったなしの課題です。

今後の建設業にとって重要なのは、以下の二つの柱です。

「発生させない」技術の導入:
AIによる発注量の超精密予測や、現場と工場間のリアルタイム連携により、過剰発注の習慣を根本から見直すデジタル化の推進。

「高付加価値に再利用する」イノベーション:
戻りコンを単なる埋め立て材ではなく、高品質な骨材や新たな建材へと生まれ変わらせるリサイクル技術の開発と普及。

残コン・戻りコンの削減は、廃棄物対策に留まらず、建設産業が持続可能性と生産性向上を両立するための試金石です。この課題に真摯に向き合うことこそが、未来の建設現場のスタンダードを築く鍵となるでしょう。


【本件に関するお問い合わせ先】
□株式会社奥村組 ICT統括センター
リリースニュース:https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2025/ai-3.html
 イノベーション部 DX推進課
 E-mail:ict@okumuragumi.jp
 URL:https://www.okumuragumi.co.jp/

□NTTドコモソリューションズ株式会社 
 広報室 
 E-mail:kouhou@nttcom.co.jp
 URL:https://www.nttcom.co.jp

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