こんにちは。建物の竣工後に起こる可能性のある異音。これは様々な要因で発生するため設計段階で予測することは困難な事象です。3年程前に建物内の異音の発生箇所を把握できるというシステムをご紹介しましたが、複数のマイクロホンを使うことで音の発生源を高精度で可視化できるというものでした。
今回「株式会社日立製作所」より、AIを活用した異音の検知ソリューションが開発され、来月より販売が開始されるということです。音の検知にもAIが活用されるようになりました。
ちなみにこのソリューションは建物内用途ではなく、主に製品検査時や設備保全を対象としたものとなるそうです。
品質トラブルや設備故障を未然に防ぎ、現場における安定稼働を実現
同社は、製造現場における製品検査や設備保全を対象に、製品の打音や設備の稼働音などの音響データから異常音を検知するソリューションを11月2日より販売開始。
このソリューションは、同社の自社工場での実績・ノウハウをもとに実用化したというマイク機能搭載の無線センサーなどで収集した音響データを、こちらも同社の独自開発した高精度に音響解析ができるAI技術で解析し、製品の不良や設備故障による異常音を検知するもの。
このソリューションによって、これまで検査員の経験で行われていた製品や設備の聴音点検の高度化・効率化が可能になり、品質トラブルや設備故障を未然に防ぐことで、安定した製造現場の操業や設備稼働、企業の品質保証体制の強化を支援するものとなっています。
出典:日立製作所
背景
昨今の少子高齢化にともなった労働人口の減少が深刻化していく中、多くの企業では多種多様なセンサーなどで取得したデータを利活用することで、現場の業務効率化をおこなうデジタルトランスフォメーション(DX)に取り組んでいます。
DXの流れはコロナ禍においてさらに加速しており、製品検査や設備保全においても目視や聴音など、人の感覚に頼った従来の検査・点検から自動化、省力化することが求められています。
特に多様な情報を持つ音を活用した聴音点検に対するニーズが高まっていますが、後継者不足の中にいかに品質トラブルや設備故障の予兆になる異常音の判定に必要となる熟練者の経験やノウハウを継承するかが喫緊の課題になっています。
このような背景から、同社では製品検査や設備保全を対象に、AI技術や無線センサー技術を活用し、音響データから異常音を検知するソリューションの開発/販売に至ります。
開発されたソリューションは製品検査と設備保全の2つの利用用途に合わせ提供されます。これらサービスによりユーザーは従来の検査員の経験やノウハウで行われていた判定を、データ解析に基づいた定量的な判定によって補完することで、安定した品質維持や遠隔での設備監視を可能とします。
IoTデータ監視サービス:音による製品検査を可能にするIoTデータモデリングサービス
このサービスは、製品の聴音検査を対象に、製品の稼働音や加工音、打音などを音の特徴や製造現場の環境に合わせた市販の汎用マイクで収集。
それをAI技術により音源を分離し、雑音を除去するとともに、対象となる検査音の特徴量を抽出し音の異常度を算出・可視化することで異常音を検知します。
また、通常、音分析においては稼働音の変動や周囲の環境音の変化など、条件や時間により音のブレが大きいという課題がありますが、同社のAI技術ではそのような音のブレに対応しながら、幅広い条件下で高精度に異常音を検知することが可能になるとのこと。
異常音検知システム:音による設備保全を可能とする設備点検自動化サービス
このサービスは、設備点検を対象にマイク機能を搭載した同社独自開発のレトロフィット無線センサーで設備の稼働音を収集・解析し、異常音を検知します。
レトロフィット無線センサーとは、同社工場での実績・ノウハウをもとに実用化したもので、電池駆動・防水防塵かつ無線通信が可能で、電源や通信ケーブルの設置が難しい屋外や高所の現場でも容易に導入が可能。
さらに独自の省電力設計により、電池による連続稼働期間は約5年となっています。また、2018年から同社で販売しているアナログメーターの目視点検を自動化するレトロフィット無線センサーと併用することで、設備点検自動化の範囲を拡大することができるとのこと。
まとめ
これまで人の経験やノウハウで行われていた検査を、テクノロジーで自動化する。やはりどの業界でもマンパワーで行っていることはまだまだ多く、こうしたテクノロジーが活用されていく流れにありますね。
AIを活用するメリットとしては、業務の効率化もそうですがAIを使うことで人では気付かなかった部分まで検知できるようになる可能性が高く、より検査品質が向上するというメリットがあります。
今回の技術は主に製造現場向けの製品や設備に対するものですが、建設業界での建物の竣工後の異音検知などにもAIを使ったものが今後出てくる可能性は高い、というよりは既に出ていると思われます。