記事のポイント
・清水建設株式会社（以下、清水建設）が、繊維補強モルタルの「ラクツム（LACTM）」で積層造形した３Dプリンティング型枠を自社の開発事業で建設中の実現場に初適用した。
・大規模デッキのコンクリート柱４本の埋設型枠を３Dプリンティング施工した結果、従来では難しい自由曲線形状の柱部材を短時間で構築することに成功した。
繊維補強モルタル「ラクツム」で積層造形した埋設型枠を実現場に初適用
清水建設は、高強度・高靱性の繊維補強モルタル「ラクツム（LACTM）」で積層造形した３Dプリンティングを実現場に初適用した。３Dプリンティングでは型枠のような薄い構造物を造形する際、従来のモルタルを使用すると形状を維持できずに崩れてしまう。かといってモルタルの凝結を待ちながらのプリンティングでは作業効率化には繋がらない。
そこで昨年から清水建設が開発していたのが「ラクツム（LACTM）」だ。ラクツムの構成材料としては、通常モルタルに用いられるセメントと砂のほかに、長さ６mmの合成繊維、高性能減水剤、シリカフュームを付加。それぞれ、合成繊維はモルタルの粘性付与と高靱性化、高性能減水剤は凝固時間の制御、シリカフュームは高強度化に寄与している。
このラクツムを使用した積層造形物は耐久性にも優れており、積層面が目視確認できないほど一体化しており、内部に劣化原因となる水や空気の侵入を助長する気泡や空隙がほとんど生じないとしている。
出典：清水建設
このラクツムが開発されたことで、フレッシュな状態においても形状保持したまま高さ２.１mの柱型枠を約２時間で造形できるようになった。
今回、ラクツムで積層造形した３Dプリンティングの型枠を、清水建設の自社開発事業として建設中の「（仮称）豊洲六丁目４-２・３街区プロジェクト」の現場に初適用した。敷地内に整備する交通広場の上部を覆う大規模デッキのコンクリート柱４本の埋設型枠を３Dプリンティング施工し、従来工法では困難であった自由曲線形状を有する高さ４.２mの柱部材を短時間で構築することに成功したという。
出典：清水建設
適用現場では、ラクツムと技術研究所の専用実験施設「コンクリートDXラボ」に配備された材料押し出し方式の３Dプリンティング装置を利用し、円状の基部から頂部に向かいネジれながら花びら状に形を変えていくという特殊なデザインの、高さ４.２m、直径２.２m～２.７mの大型柱の埋設型枠を製作。巨大な柱の為、分割して積層造形された型枠を現場で組み立てコンクリートを打ち込み、その特殊な形状の柱４本を完成させた。
出典：清水建設
今後も建設業界では慢性的な人手不足が懸念されており、特にRC造の施工においては省力化・省人化が喫緊の課題となっている。清水建設では部材のプレキャスト化を課題解決のキーとしており、３Dプリンティングで造形した埋設型枠を活用することで、プレキャスト化の概念を現場施工に採り入れる新たなソリューションであるとしている。
３Dプリンティングは、構築物の３次元CADデータがあれば任意の曲面形状を自在にスピーディーに造形できることから、設計の自由度の飛躍的向上も期待されている。
□清水建設株式会社
3Dプリンティング技術を活用し、自由曲面形状の大規模コンクリート柱を構築
リリース記事：https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2020053.html
