大林組 BIM図面審査に対応した確認申請などを複数案件で提出。

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株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美、以下「大林組」)は、国土交通省が進める建築確認におけるBIM図面審査に対応するため、指定確認検査機関および構造適合性判定機関などと連携し(※1)、BIMモデルを活用した確認申請を複数の案件で提出するとともに、同一の案件において、申請・審査用のプラットフォーム(確認申請用CDE)を活用し、省エネ適合性判定および構造適合性判定も提出したというリリースニュースをおとどけします。

社内DXでのBIM運用を基盤に申請品質の向上と省力化を実現

確認申請用CDE運用イメージ

背景

建設業では人手不足や建築士の高齢化を背景に、建築確認申請・審査の生産性向上が急務となっています。国土交通省はこの解決策として2026年4月よりBIM図面審査制度(※2)を導入しました。

本制度は、BIMで作成した3次元の建物モデル(3Dモデル)をもとに確認申請の図面などを作成し申請を行います。審査者は従来のPDF図面に加えてIFC(※3)などの3Dモデルを参考にすることで、図面ごとの整合性確認を省略することが可能です。

大林組では、2020年からPDFを用いた確認申請の電子申請に取り組むなど、建築確認手続きのデジタル化を段階的に進めてきました。今回、これらの取り組みを踏まえ、BIM図面審査に対応可能な運用方法を整備しました。

大林組のBIM図面審査対応の流れ

3Dモデルを起点に、確認申請に必要な図面およびIFCデータを作成し、これらが定められた入出力基準に沿って作成された図書であることを誓約書(※4)により明確化します。併せて、確認申請用CDEに申請に関わる図書を提出し、指摘事項の確認も同環境下で行います。

申請図書の整合性を高め、誓約書および確認申請用CDEを運用することにより、申請・審査における実務負担の軽減に貢献しています。

  1. 建築モデルを起点とした整合性確保の考え方を整理

建築モデル(意匠・構造)を整合性確保の起点と位置付け、どこまでをBIMで整合させるかの範囲を明確にしました。意匠・構造については、統合BIMモデルで一元的に管理することで、図面間の整合性を確保しやすい運用としています。

一方、設備については、建築モデル(意匠・構造)を参照(リンク)して作成することで、全体の整合性を確保するとともに、ヒューマンエラーの低減を図りました。これらの運用が、BIM図面審査を前提とした申請図書の整合性向上の土台となります。

  1. 確認申請用CDEで図書管理・指摘対応を一元化

確認申請用CDEを活用し、設計者と各審査機関(特定行政庁、指定確認検査機関、構造適合性判定機関、省エネ適合性判定機関、消防)が同一環境で最新の申請図書を共有できる体制を整えました。コメントや指摘事項を一元管理することで、指摘内容の行き違いを防止し、設計者側でもマークアップや差分確認により修正点を把握しやすくしています。

さらに、各審査機関へのアップロード窓口を集約することで、指摘対応に伴う手戻りを削減し、確認申請業務全体の省力化につなげています。

  1. 誓約書作成を支える「合意形成会議」と参考図面作図上の工夫

BIM図面審査では、設計者が誓約書を正しく理解し、整合性確保の対象範囲を明確にしたうえで記載することが重要です。一方で、通常の確認申請と比べて、事前確認や整理に一定の手間が生じる場合があります。そこで、設計者および社内関係者が協力して誓約書を作成する「合意形成会議」を開催し、整合性確認部位を事前に整理することで、提出資料の正確性を高めています。

併せて、構造図ではBIMの属性情報を色分けして出力する運用を行い、モデルから作成されていない2D加筆部分は、緑色で明示しています。設備図は枚数が多く作業負担が大きいことから、段階的な運用整備を進めています。

社内BIM図面審査フロー(合意形成会議の開催)

BIM出力した図面例

今後の展望

大林組はDXを活用した申請体制の構築・運用により、図面間の整合確認や指摘対応に伴う手戻りの削減を推進しています。今回の取り組みではBIM図面審査制度に基づく確認申請を推進し、2026年度は10件以上の案件適用を目指します。また、2029年に予定されているBIMデータ審査(※5)への移行など、将来的な制度動向やIFC活用拡大の流れを見据え、運用改善に取り組んでいきます。

今後も申請品質の向上と申請・審査業務の省力化を実現し、建築分野におけるDXを通じた生産性向上に貢献します。

※1 指定確認検査機関
確認検査および省エネ適合性判定:一般財団法人日本建築センターおよび日本ERI株式会社
構造適合性判定:一般財団法人日本建築センターおよび一般財団法人ベターリビング
※2 国交省 BIM図面審査 制度説明会資料(出典:国土交通省ウェブサイト)
※3 IFC
BIMデータの国際標準フォーマットの一つ。本取り組みでは審査対象外(参考)として形状理解に活用
※4 誓約書
設計者が入出力基準に従って入力・出力したことを申告する書類
※5 IFCデータを審査対象とした建築確認審査制度。2029年春から開始予定
BIM図面審査 確認申請用CDE(出典:(一財)建築行政情報センター)

資料引用:大林組

おわりに

2026年、日本の建築DXは「追いつき」から「追い越し」のフェーズへ

今回の大林組による「BIM図面審査」への対応ニュースは、日本の建築史において大きな転換点となるでしょう。しかし、一歩引いて世界を見渡せば、日本の現在地は決して楽観できるものではありません。

世界との「10年の空白」をどう見るか

シンガポールが建築確認のBIM義務化に踏み切ったのは2015年、北欧諸国に至っては2000年代後半からIFC(標準データ形式)を活用した自動審査の試行を始めています。
それらトップランナーと比較すると、日本には約10年から15年の「制度的遅延」があるのが現実です。

なぜこれほどの差がついたのか。
そこには、2次元図面に法的証拠能力を求める「紙文化」の根強さや、世界でも類を見ないほど複雑かつ緻密な日本の建築基準法という壁がありました。
これまでは「BIMでモデルを作っても、結局は確認申請のために2次元図面を引き直す」という二度手間が、現場の生産性を削いできたのです。

2029年、データ審査がもたらす「リープフロッグ」

しかし、2026年4月にスタートした「BIM図面審査」は、単なるプロセスの電子化ではありません。
2029年に予定されている「BIMデータ審査(データそのもので法規を自動判定する仕組み)」への重要なステップです。

日本はこの「遅れ」を逆手に取り、最新の国際標準規格であるIFC 4.3などを初期段階から組み込むことで、先行国が経験した試行錯誤を飛び越える「リープフロッグ(カエル跳び)」的な進化を遂げる可能性があります。
大林組がいち早くIFC活用拡大を掲げ、実案件での運用を開始したことは、日本のガラパゴス化したワークフローを世界標準へ強制アップデートする先行事例となるはずです。

現場に求められるマインドセットの変化

制度が整いつつある今、最後に問われるのは私たち業界全体の「適応力」です。BIMは単なる3Dソフトではなく、情報のプラットフォームです。
2029年の完全データ審査時代には、設計・施工・審査の境界線はより曖昧になり、情報の透明性と整合性がこれまで以上に厳格に求められるでしょう。
「世界から10年遅れている」事実は真摯に受け止めるべきですが、この2026年からの数年間でその距離を一気に縮め、デジタルツインの社会実装で世界をリードする。
そんな逆転劇の幕が、今まさに上がったのだと感じさせられるニュースでした。


【リリースニュース配信元】
□株式会社大林組
大林組コーポレート・コミュニケーション室広報課
リリースニュース:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20260417_1.html

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