大成建設「t.WAVE®(ひび割れ解析技術)」の実用性がさらに向上

sugitec

こんにちは。いよいよ2020年に向けて残り10日を切りました。多くの方は今週で仕事納めになることだと思います。この1週間、特に我々のような現場仕事では怪我や事故のないよう最後まで気を抜かずにいきましょう。

さて、本日は大成建設が2008年に開発したコンクリートひび割れの画像解析技術である「t.WAVE(ティードットウェーブ)」の話題。この度その「t.WAVE」がさらに実用性の高い解析システムへとブラッシュアップされています。

t.WAVE+ドローン撮影で、点検時間短縮と費用削減を実現

まず「t.WAVE」というひび割れ解析システムですが、下記のような「ガボールウェーブレット変換」という独自手法が用いられた解析技術です。

ガボールウェーブレットとは、かなり簡単に言うと「画像の中にどの方向の線が含まれているかを抽出できるフィルタ」を使った周波数解析ということになるでしょうか。ひび割れの幅や長さを定量的に評価可能な手法です。


出典:大成建設

独自のひび割れ画像解析手法

撮影画像の画素が持っている輝度情報からひび割れ判別を行っている、従来の画像解析ではコンクリートの汚れや色の濃淡によってひび割れ抽出精度にばらつきが生じます。

t.WAVEではこれら影響を排除するために、ガボールウェーブレット変換を用いた画像解析手法を用いることで、高精度にひび割れ検出することが可能になっています。

高い再現性

画像分解能0.8mm/pixelの撮影画像から、幅0.2mm以上のひび割れの検出が可能。そのため同一場所でも解析結果の再現率は95%以上と高く、ひび割れの経時変化を素早く把握可能。

遠方からの撮影画像でもOK

高所や障害物がある場所など遠方からの撮影画像でも、画像分解能が同等であれば検出精度は同等。

専用プログラムの組み込みとアクセス困難箇所の計測用にドローンでの解析機能を追加

背景

国内では高度成長期にコンクリートで建設されたインフラ構造物が、供用後50年を超えるものが数多く存在しており、その老朽化が懸念されているのが現状。これらに対し、2014年に国交省が法令により定期点検を義務化したのは記憶に新しい所です。

従来のインフラ構造物の点検では点検員による目視確認などが多く、点検結果は点検員の技量によってばらつきが生じる可能性があり、定量的な評価が困難という課題がありました。

また高所は、足場仮設や高所作業車を使用しつつ、構造物の躯体形状に沿うように点検していくことから多大な時間と費用が掛かっていました。

実用性が大幅に向上した「t.WAVE」

このような現状から2008年に開発された大成建設の「t.WAVE」。これまでに20件以上のインフラ構造物の点検業務に活用されてきています。

そして、システムのさらなる実用性向上のため、ひび割れ点検に係る専用プログラムを組み込み、高架橋などの高所やアクセス困難な箇所の計測に、ドローンの撮影画像の解析機能を付加。

沖縄県内の海上橋や高架橋を対象に、この「t.WAVE」を用いた点検の実証を行った結果、点検時間の短縮と費用の大幅な削減が可能になることが確認されたそうです。


出典:大成建設

ひび割れ状況を定量的に評価し劣化状態を診断

コンクリート構造物のひび割れの幅、長さを画像処理、解析により高精度に検出・数値化することで、ひび割れ密度などひび割れ状況の定量的な評価が可能に。これにより、従来の点検員による目視点検では定量化が困難であった構造物の劣化を客観的に判断できるばかりでなく、経年劣化の進行状態を把握することができます。

画像処理・解析の効率化でスムーズな点検作業が可能

今回、ひび割れ画像処理・解析に係る専用プログラムを組み込んだことで、現地でも撮影状況に合わせ撮影された画像に対し、正面から見たように変換する正対補正や画像合成などの最適処理、ひび割れ状況の画像解析および解析結果出力に至る一連の作業を連続して効率的に実施できるため、点検作業がスムーズにできます。

点検時間の短縮と費用削減

ドローンを用いた撮影を適用することで、目視に比べて足場や高所作業車、ロープアクセスが不要になることから、構造物のひび割れの撮影、画像処理、解析等の点検作業の短時間・安価な実施が可能に。例としては、大規模高架橋(橋長50m以上、点検面積1500㎡~16,000㎡程度)のひび割れ点検試算では、目視点検に対して作業時間を最大50%削減、費用を最大40%削減することができます。


出典:大成建設

まとめ

同社では開発技術の社会実装を積極的に展開するため、コンクリート構造物の維持管理業務をさらに正確で迅速に、安価に実施できるよう検討を進めていくとのこと。

今やひび割れの自動抽出システムは各社から出ていますが、それぞれ細かい部分で抽出方法が異なっているものも多いです。最近ではAIを用いたものも出てきていますね。少し調べるだけでも沢山出てきます。

各社細かい違いはあれど大体は似通った感じのものが多い印象ではありますが、どれを選択するにせよソフトで良い診断結果を得るには、良好な画像が必要なのは確かです。撮ったはいいけど基準に満たないような画像であっては解析結果にも影響があります。現地の環境状況など適切に判断し撮影するということも作業者には大事なことですね。

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