戸田建設
「セミアクティブオイルダンパー」で高性能の免振建物を実現。

sugitec

概要

戸田建設株式会社(以下、戸田建設)は、(株)川金コアテック、光陽精機(株)と共同開発し、
2021年4月1日に大臣認定を取得した地震の揺れに応じて減衰性能を変化させることで従来よりも高性能な免震建物を実現する「セミアクティブオイルダンパー」を開発し、戸田建設の筑波技術研究所内の建物に実装した模様をお送りします。

戸田建設のセミアクティブオイルダンパー

開発の背景

近年注目されている長周期地震では、地震の揺れと共振した超高層建物や免震建物において非常に大きな揺れが発生することが報告されています。

また、東北地方太平洋沖地震を始めとする大地震時においても同様の報告がされています。

特に免震建物では、揺れが大きくなると周囲の擁壁と衝突して建物に大きな被害が生じる可能性があります。一方、免震建物の大きな揺れを抑制する対策として、免震層に設置するダンパー数を増やす(減衰を大きくする)ことが挙げられますが、中小地震時に建物の加速度が増加し、免震建物としての効果が低下してしまうことが課題でした。

セミアクティブオイルダンパーの仕組み
本技術は、オイルタンクのバルブを電気的に開閉することでオイルの流量を調整し、瞬時に低減衰、高減衰の2種類の減衰性能に切替えることが可能な高性能オイルダンパーです(写真1)。

小地震から大地震まで、地震の揺れに応じて減衰性能を切替えることで、従来の免震建物に比較して地震時に建物に作用する層せん断力を約20%低減して、建物の安全性を高めることが可能です(図1)。

写真1 セミアクティブオイルダンパー
図1 建物の応答比較の一例

今後の展開

開発したセミアクティブオイルダンパーは、自社の筑波技術研究所内の建物に実装して性能を検証した後に、現在建設中の新社屋「TODA BUILDING」において適用予定です。

戸田建設では今後、免震建物をより安全、安心なものとするために、長周期地震や大地震における建物の揺れの抑制、周囲に十分なクリアランスを確保できない狭隘な敷地への適用など、セミアクティブオイルダンパーの得意とする場面で高性能免震システムの普及を図っていきます。

資料引用:戸田建設

おわりに

戸田建設開発のセミアクティブオイルダンパーの性能内容の前に、「長周期地震動」をすこし理解しておく必要があります。

長周期地震動とは
地震が起きると様々な周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。
ここでいう「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。
南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。このような地震動のことを長周期地震動といいます。
建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して、建物が大きく揺れます。都市部の高層ビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れます。
さらに、高層階の方がより大きく揺れる傾向があります。
東日本大震災では、首都圏などの高層建物が長周期地震動により大きく長く揺れたのも記憶にあると思います。そして、長周期地震動によりこうした高層ビルが大きく長く揺れることで、室内の家具や什器が転倒・移動したり、エレベーターが故障する危険性があります。

こうした長周期地震動への対策には、スクリーニングや詳細調査で、改修等が必要か確認を行います。
その結果、用途や構造種別などの建築物の特性に適した改修設計を行います。
改修には変形を抑制するために必要なフロアに地震エネルギーを吸収するためにのダンパーなどを設置する対策がとられています。制震改修手法の例としては、建物と逆方向に振れる錘により揺れを抑える装置の「TMD」や、柔らかい伸び能力のある鋼材で地震エネルギーを吸収する装置の「鋼材系ダンパー」、そして、装置の中にある油の流体抵抗を利用して地震エネルギーを吸収する装置の「オイルダンパー」があげられます。

そして、国土交通省も予測される南海トラフ巨大地震の発生で長期的地震動の対策が必要なエリアとして、関東地域、静岡地域、中京地域、大阪地域を指定し、高さ60mを超える超高層建築物と免震装置が設置された免震建築物を対象に改修補助制度を設け、地域社会の強靭化をはかる構えです。

トルコ地震発生から一週間を経過し、哀悼の意とともに復興の援助の力が現地に届くことを祈りつつ、地震の脅威に人は対峙する術は土木・建築から、地震の盾になる技術が生み出されるとあらためて考えるライターでした。


参考・関連情報・お問い合わせなど

戸田建設株式会社
リリースニュース:
https://www.toda.co.jp/news/2023/20230207_003166.html

建設技術新技術紹介
技術開発でお困りですか?

スギテックでは、DXを推進していく中で、皆様が日々抱えている課題を解決するお手伝いをさせていただきます。

「技術開発を考えているが実現できる技術なのか?」「こんなことをやりたいと思っているが、費用は大体いくらかかるのか?」等、気軽に相談や見積もりができる所をお探しの方は、是非お気軽にお問い合わせください。

SUGITEC|建設業界の最新技術紹介
タイトルとURLをコピーしました