大成建設株式会社(以下、大成建設)は、株式会社本田技術研究所(以下、本田技術研究所)、大成ロテック株式会社(以下、大成ロテック)と共同で、走行中のEV(電気自動車)に非接触で大電力を供給する無線給電道路システムを開発というリリースニュースをおとどけします。
磁界結合方式無線給電道路システム
本技術は、車両総重量20トンクラスの大型車への対応を視野に100万輪(49kN換算輪数)※1の載荷走行試験に耐える舗装構造を確立し、直流電源システムと道路に埋設した直流配電型GA(Ground Assembly)システムと大電力給電技術を組み合わせ、技術基盤を構築しました。
また、2027年度以降には走行中無線給電の公道実証を予定しています。
脱炭素社会の実現に向けてEVの普及が進む一方で、特に大型車では「大容量バッテリーの搭載による車両重量増加」や「充電時間の長さ」が課題となっています。
走行中に道路から直接電力を供給できれば、バッテリー容量を抑えつつ長距離走行が可能となり、輸送分野のカーボンニュートラル化に大きく貢献できます。
磁界結合方式の無線給電道路の社会実装に際しては、「大型車の荷重に耐える舗装構造」と「高速走行するEVに大電力を供給する電気設備」を両立する必要があります。
特に、①施工性と将来的な更新性への配慮、②車両総重量20トンクラスの大型車の走行に耐える舗装構造、③直流配電型GAシステムに数十ミリ秒間の大電力を安定して供給する直流電源が課題となっていました。
そこで3社は、本共同研究において上記の課題を解決するため、大成建設グループ次世代技術研究所/幸手「T-FIELD/SATTE」※2に構築した実験道路および輪荷重試験機を活用し、走行中無線給電道路の公道実証を見据えた検証を行い、実用化に向けた技術基盤を構築しました。(図1、表1参照)

| 企業名 | 実施概要 |
| 大成建設 | 直流電源システムの開発 |
| 本田技術研究所 | 道路に埋設して車両側に送電を行う「直流配電型GAシステム」、車両側で受電を行う「VAユニットを搭載した車両システム」の開発 |
| 大成ロテック | 無線給電道路の施工方法の開発 |
| 3社共同 | 無線給電道路および関連設備の更新手法の開発 直流配電型GAシステムを埋設した無線給電道路の舗装構造の開発および耐久性試験の実施 直流配電実験および無線給電実験の実施 |
表1 共同研究各社の役割
本システムは、将来的な商用大型車への適用を見据え、最大150kW級の給電に対応可能な国内最大級の走行中無線給電システムとして設計しています。今回のT-FIELD/SATTEにおける検証では、大型車の繰り返し載荷に耐える舗装構造の構築および輪荷重試験による耐久性評価、高出力給電を可能とする直流電源システムの有効性を確認し、大型車への走行中給電に向けた検討を行っています。
なお、本共同研究は、大成建設が開発を進める無線給電道路システム「T-iPower® Road」の社会実装に向けた重要な検証として位置付けられています。
本技術の特長は以下のとおりです。
1 施工性・更新性を考慮した実用的な道路(写真1参照)
既存舗装の切削・埋設などを前提とした構造を採用し、切削面の不陸(凹凸)対策や配線ルートの合理化など施工段階で顕在化した課題の改善により、将来的な補修・更新にも対応できる実用的な施工方法を確立しT-FIELD/SATTEに実験道路を構築しました。
2 大型車の荷重に対応する舗装構造(写真2参照)
T-FIELD/SATTEの輪荷重試験機を用いて100万輪(49kN換算輪数)の台上試験を実施し、舗装構造が大型車による長期間の走行に耐えうることを確認しました。
3 直流配電による高効率・安定給電
新たに開発した直流電源システムと実験道路に埋設される直流配電型GAシステムを組み合わせ、数ミリ秒間隔で大電力を安定して供給できるシステム構成の有効性を確認しました。
今後3社は、2026年末に大成建設グループ次世代技術実証センター/田村「T-FIELD/TAMURA」※3に試験走行路を構築し、実車を用いた100万輪(49kN換算輪数)の載荷走行試験による長期耐久性の評価、最大150kW出力での走行中給電性能の実験、漏えい電磁界対策などを進めるとともに、公道実証等を通じて社会実装を目指します。
なお、この3社は、2027年度以降に東日本高速道路株式会社が実施する、館山自動車道(千葉県)における走行中無線給電技術の実証実験「館山プロジェクト」に参画します。※4
また、大成建設は、「T-iPower」※5シリーズで培った給電技術と土木・舗装分野の知見を基に、走行中給電インフラを早期に実現し、物流分野をはじめとするモビリティのカーボンニュートラル化に貢献してまいります。



※1
大型車が頻繁に通行する交通条件(1方向当たり1日250台以上1,000台未満の大型車が通行する道路)において、舗装路面に49kNの輪荷重を繰り返し作用させた場合、疲労破壊によるひび割れが発生するまでの回数
※2
大成建設グループ次世代技術研究所/幸手「T-FIELD/SATTE」:
埼玉県幸手市に整備した、日本初となるゼロカーボンビルを核とする、建設および道路分野の脱炭素化を加速する研究・実証拠点。低炭素コンクリート・アスファルト、道路インフラ関連の次世代技術を施設内の5つのフィールドが連携することで、開発から製造、施工、展示まで一体で推進
※3
大成建設グループ次世代技術実証センター/田村「T-FIELD/TAMURA」:
福島県田村市に整備した、ゼロウォータービル(ZWB)を中核に、雨水を活用した水循環の自立化、生物多様性の保全・再生、次世代舗装技術の早期実用化など将来の自然共生社会と道路インフラに関わる社会課題の解決と実装を目指す実証拠点
※4
館山自動車道本線での走行中無線給電の実証実験に向けた参画企業が決定
https://www.e-nexco.co.jp/pressroom/head_office/2026/0526/00016228.html
※5
「T-iPower®」:大成建設が開発した無線給電技術の総称。目的・用途に応じて、以下の技術をラインナップ
「T-iPower Road」:高速走行するEVに連続給電を可能とする無線給電道路
「T-iPower Floor」:床や側壁から小型EVやロボットに電力を供給する無線給電システム
「T-iPower Beam」:オフィス内でロボットなどから離れた環境センサーに電力を送受信するシステム
資料引用:大成建設
おわりに
2026年初頭、ホンダが発表したEV戦略の見直しは、業界内に大きなインパクトを与えました。一見すると「EVシフトの一時後退」と受け取られがちなこの決定ですが、今回の大成建設らとの共同開発を知ることで、その本当の狙いが浮き彫りになります。
それは、EV化からの撤退ではなく、「自動車単体で課題を抱え込む自前主義」からの脱却と、現実的なエコシステム構築へのシフトです。
これまでのEV開発は、航続距離を伸ばすために車載バッテリーを大容量化・重量化させるという悪循環に陥りがちでした。
特に20トン級の大型トラックなど商用物流分野において、この「バッテリーの重厚長大化」と「長い充電時間」は稼働率を直撃する死活問題でした。
そこで提示された現実解こそが、ゼネコンとタッグを組んだ「インフラ協調型」のアプローチです。
走行中の道路から直接給電を受けることができれば、車載バッテリーを最小限に抑え、車両の軽量化・コスト削減と長距離走行を同時に達成できます。
車を作るメーカー単独では解決できない「20トン重荷重に耐える道路構造」や「埋設・修繕の施工性」といった土木の壁を、大成建設や大成ロテックとのオープンイノベーションによって打ち破ろうとしています。
乗用車市場でハイブリッド(HEV)への回帰が進む一方、物流分野の脱炭素化は一刻の猶予も許されません。
2027年度以降の高速道路での実証を見据え、決まったルートを走る商用車にフォーカスを絞った取り組みは、きわめて理にかなった戦略と言えます。
「車」という単体プロダクトの枠を飛び出し、「道路・社会インフラ」ごとモビリティを変革しようとするホンダとゼネコンの挑戦。
走行中給電道路の社会実装は、日本の物流インフラとエネルギーの未来を大きく塗り替える可能性を秘めています。
【リリースニュース配信元】
□大成建設株式会社
リリースニュース
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2026/261005_11194.html